第264章:私は拓海さんの言うことを聞く

豊田拓海は疲れ切っていたので、電話を切った後、馬場絵里菜は彼にシャワーを浴びてゆっくり休むように言った。

もう5時近くになっていたが、馬場絵里菜は二度寝する気はなく、着替えを済ませて、庭で運動を始めた。

夜、馬場絵里菜は豊田拓海と一緒に外出した。

港区のある火鍋店で、夏目沙耶香はすでに先に到着しており、テーブルいっぱいに料理を注文していた。

「私が先に全部注文しておいたわ。他に食べたいものがあったら追加してね!」

オーバーワークで疲れ切った豊田拓海の様子とは対照的に、夏目沙耶香は生き生きとした表情を見せていた。

「もう十分だよ、多すぎるって!」

牛肉、羊肉、鴨の腸、ハチノス、コリコリ、それに各種野菜と団子類で、テーブルに載りきれないほどで、横のワゴンまでいっぱいに積まれていた。

「多くないわよ、私、本当に食べたくて仕方なかったの!」夏目沙耶香は餓死寸前の人のような表情で馬場絵里菜を見つめながら言った。「撮影現場は何もかも良いんだけど、毎日お弁当で、三食ともお弁当なのよ!」

馬場絵里菜は思わず笑みを浮かべ、「まだ撮影に入って4、5日なのに、もうお弁当の文句?」と言った。

夏目沙耶香はそれを聞いて口を尖らせた。「文句じゃないわよ。ただ毎日食べてると飽きちゃって。空腹を満たすだけで、楽しみがないのよ。」

傍らで豊田拓海が思わず口を開いた。「僕は現場のお弁当、結構美味しいと思うけどな。毎日メニューも違うし。」

「まずくはないわよ。でも毎日じゃね…」夏目沙耶香はそう言いながら、急いで手を振って馬場絵里菜を見た。「もういいわ、この話は!私に話があるって言ってたでしょ?食べながら話しましょう!」

言い終わるや否や、夏目沙耶香は一皿の牛肉スライスを鍋に投入し、肉が硬くなることも気にせず、本当に火鍋が恋しかったようだった。

馬場絵里菜と豊田拓海はその時目を合わせ、それから揃って夏目沙耶香を見つめた。

馬場絵里菜が先に口を開いた。「拓海から今のあなたの状況を聞いたわ。細田鳴一監督の会社や新田愛美の個人事務所を含めて、たくさんの会社があなたと契約したがってるって。」

向かいに座っている夏目沙耶香は、それを聞いてそっと頷いた。