第268章：取り入る

心の中で考えながら、鈴木夕は細田繁について玄関まで来ていた。

細田繁がドアベルを押すと、すぐにドアが内側から開いた。

「繁、お義妹さん？」

開けたのは他でもない、細田仲男の妻、伊藤春だった。

突然の訪問者を見て伊藤春は一瞬驚いた。普段、細田繁はめったに自分から訪ねてくることはなかったからだ。

「お義姉さん！」

鈴木夕が先に口を開き、笑顔で挨拶した。「お兄さんとお義姉さんに会いに来たの！」

伊藤春は急いで二人を中へ招き入れた。「早く入って、早く入って。事前に言ってくれれば、準備できたのに！」

伊藤春は人当たりが良く、性格が非常に優しかった。細田繁の性格を知っていても、決して面と向かって嫌な顔を見せたことはなく、まして今日は奥さんと一緒に来たのだから！

「家族なんだから、何の準備もいりませんよ！」細田繁も笑顔で言った。「兄貴は帰ってきましたか？」

「帰ってきましたよ！飛行機から降りて家に着いたばかりで、二階でシャワーを浴びてます！」

二人を部屋に招き入れると、鈴木夕はやっと手に持っていたものをテーブルに置き、目の端で周りを見回しながら、にこやかに言った。「お義姉さん、初めて来たので、何を持ってくればいいか分からなくて。繁が、お兄さんがお茶が好きだって言うから、お茶のことは分からないけど、一番高いのを買ってきたの。お兄さんの好みに合うかしら。」

「まあ、そんなに無駄遣いしなくても。お兄さんはたくさんお茶を持ってるのよ、飲みきれないくらい。」

細田繁はそれを聞いて、すぐに言った。「それは違いますよ。これは弟と弟嫁からの贈り物です。それに、この高級なナマコもあります。お肌にいいって聞いて、夕が特にお義姉さんのために買ってきたんです！」

「ありがとう、ありがとう！」伊藤春は笑顔で受け取った。これは細田繁から初めて贈り物をもらったことで、結婚すると違うものだと思い、奥さんも人情世故をわきまえた人だと感じた。

この贈り物は細田繁の家族にとっては決して安くはなかったが、伊藤春は深く考えず、初めての訪問で、義妹が面目を失いたくないから、こんなに高価なものを買ってきたのだろうと思った。

みんなが話をしている時、細田仲男は声を聞いて二階から降りてきた。細田繁と鈴木夕を見て、彼も驚いた。「どうしてここに？」