馬場絵里菜の決定である以上、白川昼は当然なぜかと尋ねることもなく、反対することもなかった。
ただし、芸能事務所は他の業界とは違い、映像投資と絶え間ないタレント発掘が必要で、市場動向に対する鋭い洞察力と先見性がなければ、長く存続することはできない。
これは決して容易なことではない。
馬場絵里菜は当然、白川昼の心配を理解していた。前世であれば、彼女も芸能界に足を踏み入れることなど決してしなかっただろう。しかし今は違う。彼女は転生して戻ってきたのだから、芸能界の未来の動向を熟知している。白川昼が懸念するリスクは、馬場絵里菜にとっては絵に描いた餅のようなもので、決して起こり得ないのだ。
「法人代表は誰にする?」白川昼は深く考え込むことなく、直接馬場絵里菜に尋ねた。
馬場絵里菜は少し考えてから、「お兄ちゃんにしよう!」と答えた。
兄は既に彼女が会社を設立することを知っているので、隠す必要もなかった。
白川昼は軽く頷いて、さらに尋ねた。「じゃあ、会社の名前は?」
二人が話している時、山本陽介はエプロンを着けたまま台所から出てきて、手に出来立てのケーキを二つ持っていた。
「門主様、私の作ったティラミスを召し上がってください」山本陽介は恭しく馬場絵里菜の前にケーキを置きながら言った。
馬場絵里菜は微笑みながら、山本陽介のエプロンに目を向けた。そのエプロンは緑地で、まるで草原のようで、バラの花が一面に咲いていた。
「ローズエンターテインメント!」馬場絵里菜は思わず口にした。
白川昼は名前にそれほど関心を示さず、その四文字を記憶に留めた。一方、山本陽介は何かに気付いたかのように自分のエプロンを見下ろし、そして馬場絵里菜に向かって満面の笑みを浮かべた。
その後、馬場絵里菜は白川昼と他の細かい点について話し合い、白川昼もそれらを全て心に留めた。
……
その時、世田谷区の天都ガーデン住宅街では。
灰色のサンタナが住宅街の正門をゆっくりと通り抜けていった。このサンタナは新車とはいえ、この場所には似つかわしくなかった。住宅街の路側には数千万円以上の高級車ばかりが停まっていたからだ。
車は最後にクリーム色の邸宅の前で停車し、細田繁と鈴木夕が車から降りた。