第273章:カラー鋼化ガラス

「もういい、喧嘩はしたくない。ただ一言聞いただけで、何も言ってないだろう。」

細田仲男はこの問題について伊藤春と口論するのを避けたかった。この考え方は彼の心の中で既に根付いていて、伊藤春がどれだけ言っても、何も変えることはできなかった。

そう言い捨てて、細田仲男はタバコの吸い殻を消すと、階段を上がっていった。

伊藤春は娘のことを思うと胸が痛み、背を向けて涙を拭ったが、どうすることもできないと感じていた。

細田仲男は男尊女卑の考えを持っていたが、娘を虐待することはなく、ただ息子ほど気にかけていなかっただけだった。それに伊藤春も分かっていた。自分が何を言っても無駄だということを。細田仲男は男尊女卑の家庭で育ち、その影響で自然とそういう考え方が身についていた。

彼は自分が間違っているとは全く思っておらず、むしろ当然のことだと考えていた。

そのため、伊藤春は密かに娘に対して倍の愛情を注ぎ、細田萌への埋め合わせをしていた。

……

ゴールデンウィーク最終日の前日、馬場絵里菜は白川昼からメッセージを受け取った。トム・ライトの設計図が出来上がったという知らせだった。

一ヶ月も経たないうちに、トムのチームはホテルの外観設計図を素早く完成させた。まさに神速だった。

東海不動産の会議室では、各部門の幹部たちも休暇を一日早く切り上げ、会議室に集まっていた。

馬場絵里菜が現れると、全員が立ち上がって「社長!」と声を揃えた。

この日、馬場絵里菜はベージュのスーツを着ていて、少し落ち着いた印象を与えたが、まだ残る幼さのある表情のせいで、全体的には相変わらず若々しく活気に満ちていた。

彼女は微笑みながら全員に頷きかけ、中央の位置に進んで「お座りください」と言った。

東海不動産は設立したばかりで、最初のプロジェクトもまだ始動段階だったが、この間誰も遊んでいたわけではなく、基本的に市場調査とホテルプロジェクトのフォローアップに忙しかった。

会社は今、立ち上げ段階にあるものの、全体的には正常に運営され始めていた。馬場絵里菜はマカオから戻ってきた後、すぐに会社に2億円の運転資金を注入し、今では東海不動産は資金不足に悩むことはなかった。

全員が揃った後、会議室の電気が消され、白川昼が自らプロジェクターの前に立ち、トム・ライトの設計図を皆に見せた。