第284章:四捨五入したら似てる

鈴木強は以前、交番で細田登美子に会った時、一目で彼女だと分かったが、細田登美子は人違いだと言った。

鈴木強は、細田登美子も自分の生活を邪魔されたくないのだと理解した。

馬場長生にも自分の家庭ができ、二人は十数年離れ離れで、それぞれの道を歩んでいたので、鈴木強は細田登美子に会ったことを馬場長生に告げなかった。

まさか彼自身が出くわすとは思わなかった。

「好美は私と登美子のことを知らないんだ」と馬場長生は続けた。

橋本好美は東京の人間ではなく、馬場長生と結婚してから専業主婦となり、めったに外出せず、多くのことは彼女の耳に入らなかったため、馬場長生と細田登美子のことなど、橋本好美は全く知らなかった。

馬場長生に外に二人の子供がいることなど、なおさら知るはずもなかった。

「知ろうが知るまいが考えるな!」鈴木強は注意を促した。「登美子にも自分の人生があるんだ。」

「分かってる!」馬場長生は言ったが、表情は複雑だった。「登美子のためじゃない、子供たちに会いたいんだ。」

馬場長生は本当のことを言っていた。確かに以前は細田登美子を愛していたが、今は妻の橋本好美を愛している。ただ、二人の子供は確かに自分の子供だ。人というのはそういうもので、もし前の出会いがなければ、おそらく深く考えることもなかっただろう。しかし運命が再び登美子との出会いをもたらした以上、馬場長生は常に細田登美子との間の二人の子供のことを考えずにはいられなかった。

その後、彼は細田登美子に会うためにパラダイスまで行ったが、実際の目的は子供たちに会うためだった。

結局のところ、彼は父親としての責任を果たしていなかった。

償いたいと言うのも良いが、ただ二人の子供に会いたかっただけだ。

鈴木強は親友として、馬場長生に細田登美子のことを考えないよう注意することはできても、子供のことまで考えるなとは言える立場にはなかった。

鈴木強は表情を曇らせ、しぶしぶ言った。「お前の二人の子供に会ったよ。」

あの日、交番で馬場絵里菜と馬場輝の二人がいた。彼は長生の子供たちだと知っていたので、特に注意して見ていた。

馬場長生は一瞬驚き、すぐに尋ねた。「本当か?二人はどうだった?元気にしてるか?」

交番で馬場絵里菜に三百万円を脅し取られたことを思い出すと、鈴木強は今でも歯ぎしりしたくなる。