第308章：くたばれ

馬場絵里菜の表情を見て、井上裕人の瞳の奥の笑みがさらに深くなり、最後に尋ねた。「まさか、彼のことを同情してるんじゃないだろうな？」

馬場絵里菜はその言葉を聞いて、目線を逸らした。

彼女にもわかっていた。先ほどの田中海が若い女の子である自分に対してあれほど攻撃的だったことからして、その人物は同情に値しないということを。

ただ、罰を与えることは構わないが、この罰は少し重すぎるのではないかと思っただけだった。

馬場絵里菜が黙っていても、井上裕人は彼女の心中を察していた。すぐに軽く笑って言った。「痛みを伴わなければ、それは罰とは言えない」

馬場絵里菜はその言葉を聞いて顔を上げた。陽の光の中で、彼女の肌は柔らかく輝き、眉目の間には人を焦がすような強情さが宿っていた。

「あなたのやり方について私は口出ししたくありませんが、結局のところ私のためにこうしたんでしょう。だから私には反対する権利があります！」

真剣な表情の馬場絵里菜を見て、井上裕人は突然笑い出し、率直に言った。「君にその権利はない。なぜなら、私は君のためにやったんじゃない。自分が楽しいからやっただけさ！」

馬場絵里菜：「……」

言葉に詰まり、馬場絵里菜の表情が一瞬こわばった。

この井上裕人という男は、まさに彼女の天敵だった。世の中にどうしてこんな人間がいるのだろう！

とっくに見抜いているべきだった。最初から、彼は自分の気分次第で好き勝手に振る舞う人間だったのだ。

母親を突然パラダイスの総支配人にした時点で、彼の本質を見抜くべきだった！

馬場絵里菜は唇を尖らせたが、彼に返す適切な言葉が見つからなかった。殴りたくなるほどイケメンな顔を見つめながら、最後に歯を食いしばって気の抜けた三文字を吐き出した。「ひどい人！」

そう言うと、振り返ることもなく足早に立ち去った。

井上裕人は上機嫌で、馬場絵里菜の背中に向かって叫んだ。「おい！まだ飯食ってないんだけど、おごってくれないか？」

馬場絵里菜は振り返りもせずに手を振った。「くそでも食べてろ！」

井上裕人はその言葉を聞いても怒るどころか、より一層明るく輝かしい笑顔を見せた。頭上の眩しい太陽よりも目を奪うような輝きだった。

……

馬場絵里菜が教室に戻ると、午後の一時限目はすでに終わっていた。