第324章:唯一の選択

昼頃、馬場絵里菜は白川昼からの電話を受けた。

ランチタイムを利用して、学校の人気のない場所で電話に出た。

「どうだった?」と、馬場絵里菜は要点を切り出した。

電話の向こうで白川昼は一瞬言葉を詰まらせた後、「うまくいきました!相手方はこのプロジェクトの完遂に自信があるそうです。Mホテルの構造は一見複雑に見えますが、実際には想像ほど難しくないそうです。いくつかの課題点も、相手方は十分に克服できる自信があるとのことです。」

馬場絵里菜はそれを聞いて、安堵の表情を浮かべた。「よかった、じゃあ早速契約書の準備を進めましょう!」

彼女は本当にこの協力関係が実現できないのではないかと心配していた。東京では豊田剛以外に不動産業者を知らないし、建材供給業者や工事チームも知らなかったからだ。

もしセンチュリーグループでさえこのプロジェクトを引き受けられないのなら、一般の会社ではなおさら無理だろう。そうなったら誰に頼めばいいのかさえ分からなかった!

幸い、事態は良い方向に進んでいる!

「佐藤裕はもう会社に戻って契約書の草案を作成しています!」と白川昼は言った。「そうそう社長、豊田社長が今晩、自宅に招待したいとおっしゃっていました。」

「え?彼の家に?」馬場絵里菜は驚いて尋ねた。

しかしすぐに納得した。きっと協力関係が成立したので、豊田おじさんは彼女や東海不動産についてより深く知りたいのだろう。それによって彼らの協力関係をより深めたいのだと。

豊田剛はベテランだ。このプロジェクト一つを見ても、東海不動産の将来の発展性を見抜いているに違いない。長期的な戦略的協力関係を築けるなら、センチュリーグループにとって百利あって一害なしだ!

白川昼の返事を待たずに、馬場絵里菜は直接言った。「分かりました。彼が教えた住所を私に送って。今晩伺います。」

白川昼は「はい!」と答えた。

馬場絵里菜も同じ考えだった。東海不動産は設立したばかりで、この時期に基盤の確かな協力パートナーを得られれば、グループにとっても良いことだ。そして豊田剛は常に彼女の第一候補だった。

……

同時刻、港区の馬場ビルにて。

最上階の社長室で、馬場長生はプロジェクト資料を読み込んでいた。左手のコーヒーは冷め切っており、手をつけた形跡もない。