豊田剛は馬場絵里菜がどんな条件を出すのかと思っていたが、まさか港区の内装済みの家を一軒欲しいだけとは思わなかった。
両社の協力が実現すれば、豊田剛のセンチュリーグループにとっては数億円規模のプロジェクトとなる。たかが数百万円の家一軒なら、惜しむことはない。
馬場絵里菜が家を第一中学校の近くに欲しいと言ったが、センチュリーグループは東京に数多くの物件を持っているので、豊田剛にとって難しい要求ではなかった。
田中鈴もすぐに適切な物件を思いついて、豊田剛に言った。「あなた、エメラルドガーデンは第一中学校のすぐ近くでしょう?120平米の高級内装の部屋がまだ何部屋か残ってるわ!」
豊田剛も田中鈴と同じ考えだった。馬場絵里菜の条件である第一中学校の近く、約100平米、内装済みという条件に、エメラルドガーデン団地は最適だった。
「エメラルドガーデン団地は白云第一中学校の東南側にあって、直線距離で300メートルほどです。港区の繁華街に位置し、当社が昨年末に発売したばかりの物件ですが、いかがでしょうか?」豊田剛は馬場絵里菜に尋ねた。
馬場絵里菜がこの家を求めたのは、明らかに叔母の細田芝子のためだった。昨日隼人に会った時に何気なく聞いてみたところ、叔母がまだ適当な家を見つけていないことを知った。
そこで馬場絵里菜は、センチュリーグループとの協力が実現すれば、豊田おじさんに家一軒をお願いするのは問題ないだろうと考えた。自分には他に余計な条件もないし、このくらいの利益なら豊田おじさんも断らないだろう。
豊田剛が言及したエメラルドガーデン団地について、馬場絵里菜も非常に満足し、すぐに頷いた。「では、豊田おじさん、ありがとうございます!」
豊田剛は爽やかに笑い、素早くエメラルドガーデンの販売事務所の支配人の電話番号を馬場絵里菜に送った。「今晩早速連絡しておきます。いつでも引き渡しできますよ。」
夕食後、馬場絵里菜は長居せず、豊田剛と田中鈴に別れを告げて帰った。
馬場絵里菜を見送った後、二人はリビングのソファに座り、田中鈴は感心して言った。「会わないうちは気づかなかったけど、絵里菜ちゃんは本当に落ち着いているわね。十代の子供には見えないわ。言動も振る舞いも非常に適切で、まるで小さな大人みたい!」