伊藤春はこれまで性格が良く、教養があり、非常に分別のある人という印象を与えていた。
しかし実際、彼女は骨の髄まで気性の激しい女性だった。
細田仲男の不倫を発見した初日にこの家を出て行ったのは、そのような男と同じ屋根の下で暮らすことができなかったからだ。同じベッドで寝ていた夫が、他の女性とも同じように親密な関係を持っていたと思うと、吐き気を催さずにはいられなかった。
彼女は自分に彼を許すよう説得することができず、さらにはっきりと分かっていた。この一件の後、もう二度と平静な心で細田仲男に向き合うことはできないということを。
そうなると自分に残された唯一の道は、離婚しかない!
もう若くはないが、伊藤春は人生の後半を妥協して過ごしたくなかった。細田仲男が一度不倫をしたのなら、二度目もありうる。男というものは過ちを繰り返す習性がある。彼女はその道理をよく理解していた。