第331章:2人の子供は細田家に残さなければならない

伊藤春はこれまで性格が良く、教養があり、非常に分別のある人という印象を与えていた。

しかし実際、彼女は骨の髄まで気性の激しい女性だった。

細田仲男の不倫を発見した初日にこの家を出て行ったのは、そのような男と同じ屋根の下で暮らすことができなかったからだ。同じベッドで寝ていた夫が、他の女性とも同じように親密な関係を持っていたと思うと、吐き気を催さずにはいられなかった。

彼女は自分に彼を許すよう説得することができず、さらにはっきりと分かっていた。この一件の後、もう二度と平静な心で細田仲男に向き合うことはできないということを。

そうなると自分に残された唯一の道は、離婚しかない!

もう若くはないが、伊藤春は人生の後半を妥協して過ごしたくなかった。細田仲男が一度不倫をしたのなら、二度目もありうる。男というものは過ちを繰り返す習性がある。彼女はその道理をよく理解していた。

だから早めに泥沼から抜け出すことが、伊藤春の自己救済だった。

細田お婆さんが話し終わるのを待たずに、伊藤春は必死に落ち着きを取り戻し、感情を抑えた声で言った。「できるだけ早く離婚協議書を作成します。来週の月曜日に区役所の前で手続きを済ませましょう。」

伊藤春の表情は断固としており、明らかに冗談を言っているわけではなかった。

そして細田仲男はこの時になって焦り始めた。この時期に離婚すれば、会社は二人で半分ずつ分けることになる。これまでの年月の努力の末、ようやく会社の資産が一千万円に達しようとしているところで、この時期に財産分与をすれば、会社に極めて深刻な打撃を与えることになる。

計り知れない損失を被る可能性が非常に高い!

明らかに、細田仲男の目には、自分の会社の方が伊藤春という妻よりもずっと重要に映っていた。

「だめだ、同意できない!離婚したら子供はどうするんだ?」

細田仲男は焦って、すぐに二人の子供を盾にした。

細田お婆さんも離婚すれば財産分与が必要になることを知っていた。それは全て息子が稼いだお金だ。息子の嫁に半分も渡したくなかった。

すぐに頷いて言った。「そうよ、春。子供たちももう大きくなってるし、あなたたち二人が離婚したら、子供たちの心に良くない影響を与えるわ。」

伊藤春は細田仲男が子供を使って自分を脅すことを予想していた。その時、心の中で冷笑し、自嘲した。