第365章:まずは学びから

兄がこのように抵抗する様子を見て、馬場絵里菜は思わず笑みを浮かべ、彼を安心させるように言った。「そんなに緊張しなくていいわ。あなたが考えているほど大変なことじゃないから」

二人は白川昼のオフィスに向かいながら、馬場絵里菜は説明を続けた。「会社であなた専用のアシスタントチームを作ったの。関連知識の習得をサポートしてくれるわ。分からないことがあったら彼らに聞けばいいし、最悪の場合は私がいるでしょう!」

馬場絵里菜がそう言っても、馬場輝の心は落ち着かなかった。まだ19歳にもなっていない彼は、成人してはいるものの、こんな大きな場面を経験したことがなかった。

いきなり会社の社長になれというのか?

「絵里菜、兄さんが反対しているわけじゃないんだ。ただ、この立場に一気に適応するのは本当に無理だよ。君がいきなり私をそんな高い地位に押し上げるなんて、戸惑ってしまうよ!」馬場輝は正直な気持ちを打ち明けた。

馬場絵里菜はその言葉を聞いて足を止め、兄の方を振り返った。

馬場輝の目には抑えきれない動揺が浮かんでいた。彼には妹のような度胸がなく、プレッシャーに耐えられずに妹の仕事を台無しにしてしまうのではないかと恐れていた。

兄の戸惑いを感じ取った馬場絵里菜は、しばらく考えた後、軽くうなずいた。「分かったわ。社長のポジションは一旦空席にしておくけど、でもアシスタントチームについて会社で学ぶのは必須よ。自分に自信がついたら、いつでも就任してね」

これは馬場絵里菜にとってかなりの譲歩だった。彼女は兄のことをよく理解していた。兄は臆病な人間ではないが、積極的に前に出るタイプでもない。多くの場合、追い込まれない限り、自分の潜在能力がどれほどのものか気づかないのだ。

馬場絵里菜の言葉を聞いて、馬場輝はもう後には引けないと悟った。最初から会社の社長にならなくていいなら、もう心配することはない。

学ぶことなら、考えてみれば怖いことは何もない。

うなずいて、馬場輝は即座に承諾した。

社長室に到着すると、馬場絵里菜はまずドアをノックした。

オフィスの中で、白川昼は植物に水をやっていたが、ノックの音を聞いて手にしていたスプレーを置き、「どうぞ」と声をかけた。

馬場絵里菜がドアを開け、馬場輝が後に続いた。

「社長!」