第364章:もう1つの会社

馬場絵里菜は軽く頷いた。「今学ばないなら、いずれは学ばなければならないわ。遅くやるより早くやった方がいいでしょう」

将来、運転は基本的な生活スキルになるはず。自分は今まだ若すぎるけど、そうでなければ彼女も学びに行くところだった。

馬場輝は呆然とした。そんなことは考えたこともなかった。

家にはバイクが一台あって、それは彼のものだった。以前バーで働いていた時はそれに乗って通っていて、行き来も便利だった。

「もうすぐ六月よ。早く覚えれば一ヶ月ちょっとで免許が取れるわ。そうしないと真夏になって、暑さで死にそうになるわよ」馬場絵里菜は経験豊富そうに、天候まで分析した。

馬場輝は頷いた。今は特にすることもないし、すぐに適当な仕事も見つからないだろう。妹が運転を学べと提案したのは、確かに正しいことだ。将来家に車があるかもしれないし、家族で唯一の男として、運転できなければならない。

そう考えて、馬場輝は答えた。「わかった。じゃあ明日、自動車学校に行って問い合わせてみる」

兄が素直に承諾したのを見て、馬場絵里菜は微笑んだ。

馬場絵里菜は馬場輝を東海不動産に連れて行った。前回細田芝子を連れて来た時と同じように、二人がエレベーターを出るとすぐに、受付の女性が急いで立ち上がって挨拶した。「社長!」

馬場輝は心の準備があったので、細田芝子ほどの反応はなかったが、それでも内心驚かずにはいられなかった。

馬場絵里菜は平然とした表情で、その人に頷きながら尋ねた。「白川社長はいらっしゃいますか?」

「はい!」受付の女性は急いで頷いた。「オフィスでお待ちだとおっしゃっていました」

馬場絵里菜が馬場輝を連れて会社に入ると、社員たちは彼女を見かけるや否や手を止めて挨拶をした。馬場輝は彼女の後ろについて歩きながら、耳元で絶え間なく「社長、おはようございます」という言葉が響くのを聞いた。

これらの人々は一番若い人でも二十歳以上に見えたが、皆妹をこれほど敬っていて、決して十代の子供として扱っていなかった。

機会を見て、馬場輝は馬場絵里菜の耳元で尋ねた。「絵里菜、このフロア全部お前の会社なのか?」

馬場絵里菜はそれを聞いて、笑いながら頷いた。「今いるこのフロアは不動産会社で、上の階にはエンターテインメント会社もあるの。今日は採用面接をしているわ」