第383章:話し合いの余地なし

馬場絵里菜のところで一杯食わされ、細田繁は一時的に諦めるしかなかった。

帰り道、車の中で鈴木夕は黙っていた。細田繁は彼女が怒っていると思い、思わず口を開いた。「嫁さん、焦らないで。今日は姉さんが家にいなかっただけだよ。母さんが言ってたけど、明日直接姉さんに会いに行くって。」

「姉さんが私たちに庭を返してくれると思う?」鈴木夕は細田繁を見つめながら尋ねた。

細田繁はすぐに頷いた。「母さんがいれば、返さないなんてできないよ!」

「もし本当に返してくれなかったら、私たちどうする?」鈴木夕は言った。「仮の話よ。」

細田繁は一瞬言葉に詰まった。姉が頑なに返さないと言えば、本当に手の打ちようがない。今日は二人の子供たちに言い負かされて、理屈も言えなかったのだ。

その様子を見て、鈴木夕は思わず言った。「じゃあ、姉さんに一つだけでも返してもらうのはどう?」

今夜、鈴木夕はずっとこのことを考えていた。お父さんが言ったように、この家屋証書は細田登美子の手にあり、正式な売買契約で彼女に売られたものだ。すべては合法的だった。

細田登美子が返さないと言えば、彼らには何の手立てもない。

だから鈴木夕は考えた。それなら次善の策として、一つの庭だけでも取り戻せばいいじゃないか。何もないよりはましだ。

一つでも数千万円はするのだから!

「一つだけ?」細田繁は聞いて、少し不満そうだった。「それじゃ数千万円も損するじゃないか。」

鈴木夕は細田繁が物事を深く考えない頭の持ち主だと知っていたので、彼を睨みつけた。「姉さんが一つも返してくれなかったら、私たち一銭も手に入らないのよ。」

細田繁は黙り込んだ。

しばらくして、細田繁もようやく理解し、頷いて言った。「そうだな。じゃあ明日母さんがどう言うか見てみよう。二つとも取り戻せれば一番いいけど、だめなら一つでもいいや。」

細田繁は軽々しく言ったが、まるで最低でも一つは取り戻せるかのような口ぶりだった。

鈴木夕は心の中で確信が持てず、老婆が事をしくじるのではないかと心配だった。考えた末、やはり言った。「私も明日、母さんと一緒に行ったほうがいいんじゃない?」

「明日は仕事があるだろう!」細田繁は思わず言った。

「これは大事な用事よ。母さん一人じゃ取り戻せないかもしれないから心配なの。」鈴木夕はやはり不安だった。