馬場絵里菜は席に座って目の前の光景を見つめ、馬場長生の心中を察したようだった。
彼は最初このクラブを手に入れたかったのかもしれないが、今や目的は変わり、明らかに彼女にこのクラブを手に入れさせたくないという意図が見え透いていた。
この時、馬場長生の入札額は既に2000万円に達していた。
馬場絵里菜の指示がない限り、白川昼は自主的に競りを続けようとしたが、馬場絵里菜に軽く制止された。
馬場絵里菜は彼に向かって首を振った。「もういいわ」
2000万円は、このクラブの実際の価値を超えていた。彼女は敵を作るつもりもなく、馬場家と対立するつもりもなかった。これ以上競り上げても、落札しても損をする取引になるだけだった。
彼女はビジネスウーマンだ。損をする取引はできない。
馬場絵里菜が降りたことで、クラブは馬場家によって2000万円の高値で落札された。
この価格は、クラブの実際の価値を超えていた。結局、このクラブは港区にはなく、規模はパラダイスと同程度だが、パラダイスほどの価値はなかったのだ。
2000万円で、馬場長生は特に得をしたわけではない。
馬場長生もそれを十分理解していたが、彼にとって2000万円は惜しくなかった。彼は東海不動産に対して一矢報いて、意地を張りたかっただけだ!
「この馬場長生、まだ恨みを持ってるんですね?」白川昼は軽蔑するように口を歪めた。
馬場絵里菜は微笑んで、何も言わなかった。
馬場長生は恨みを持っているのではなく、面子にこだわっているのだ!
まあいい、せっかく気に入ったクラブを手に入れられなかったが、馬場絵里菜は気にしていなかった。
勝負は時の運、オークションというものは、誰もが思い通りになるわけではない。
司会者の声が適切なタイミングで響き渡り、4番目の物件の競売が始まった。
「ミューズバー、港区のバー街の中心地に位置し、若者に人気のあるトレンディーな夜のスポットです。昨年改装を行い、海外のトップクラスの音響設備とバイブレーション機能付きのダンスフロアを導入しました…」
司会者の熱のこもった説明は馬場絵里菜の興味を引かなかったが、白川昼の目が輝いた。
「社長、これはいいですよ!」白川昼は興奮して言った。
馬場絵里菜は聞いて少し顔を向け、笑って言った。「バー?」