「ローズエンターテインメント?」夏目沙耶香は頭の中で考えを巡らせたが、この会社の名前を聞くのは初めてだった。
心の中で不思議に思った:「どうして私のことを知っているのだろう?」
今の作品は彼女の初めてのドラマで、つまり彼女はまだ世間の目に触れていないはずだ。そうなると、撮影現場のスタッフ以外の会社は彼女のことを知るはずがないのだが。
特に先ほど豊田拓海が言っていたように、これは新しい会社なのだ。
「先方によると、誰かの紹介があったそうで、あなたが彼らの第一候補だと。新人としては非常に良い条件を提示してくれています」と豊田拓海は言った。
彼がこれまで躊躇していたのは、沙耶香に最適な事務所を見つけるためだった。
新人として最初から大手事務所と契約することは、沙耶香にとって必ずしも良いことではない。激しい競争環境の中で、新人の選択肢は非常に限られてしまうからだ。
また豊田拓海は、沙耶香が有名になった後すぐに燃え尽きてしまうことを望んでいなかった。まだ若いのだから、一歩一歩着実に成長していってほしかった。焦る必要はないのだから。
新しい会社にも欠点はあるが、新人にとっては比較的友好的だ。先方が提示した条件も沙耶香に大きな成長の余地を与えており、それこそが豊田拓海が現在最も重視していることだった。
事務所との契約の件は、沙耶香が豊田拓海に任せていたことで、すべて彼の判断に従うつもりだった。
「はい、では時間を決めて、直接会って話し合いましょう!」
沙耶香はすぐに同意した。主に今では豊田拓海を百パーセント信頼していたからだ。
豊田拓海は笑顔で頷いた:「では後ほど連絡を取ってみます!」
……
翌朝早く、細田登美子と細田芝子は一緒にキッチンで朝食を作っていた。
「お姉ちゃん、絵里菜の誕生日がもうすぐだから、私と進藤峰で相談したんだけど、今年は私たちが開きたいの」と細田芝子は細田登美子に向かって言った。
細田登美子は反対せず、ただ笑顔で頷いた:「いいわよ、どっちみち私たちだけなんだから、みんなで賑やかに過ごすのもいいわね。あなたの新居お披露目も大事だから、一緒にやりましょう」
そう言いながら、細田登美子は手を止め、細田芝子を見つめて真剣な表情で尋ねた:「最近、お母さんがあなたのところに来た?」