時間が一分一秒と過ぎていく中、井上雪絵は期待を胸に抱いていたため、少しも辛く感じなかった。
店内で、店長は出来上がった二つのケーキをカウンター後ろの冷蔵ケースに入れ、店員に指示した。「細田さん、このケーキは同じもので、グリーンアップルの十二インチです。男性が取りに来たら左側を、女性が来たら右側を渡してください。」
「はい、店長。」
数時間があっという間に過ぎ、五時半、伊藤春のアウディがケーキ店の外に現れた。
車のドアが開き、降りてきたのは細田芝子だった。彼女は車から降りながら、運転席の伊藤春に向かって言った。「お姉さん、ちょっと待っていてください!」
実は、馬場輝は教習所のインストラクターと金曜日の午後四時間の練習を約束していたため、ケーキを取りに行く件を細田芝子に頼んでいたのだ。