第428話:一目惚れを信じる

井上雪絵は馬場輝を見つめ、その視線は率直で熱烈だった。まさに恋する人を見つめる目だった。

彼は本当にかっこいい。

かっこいいだけじゃなく、正義感もある。

ポイント加算!

テレビのドラマで見る一目惚れのシーンを馬鹿にしていた井上雪絵だったが、今この瞬間、世の中に一目惚れは確かに存在すると信じるようになった。

それは一瞬のときめき、たった一目で、この人と結婚したいと思う衝動だった。

海外での三年間の生活で、井上雪絵の心は同年代の人よりも成熟し、開放的になっていた。

彼女は慎み深さなんて気にしなかった。ただこのお兄さんのことが好きなだけだった。

井上雪絵の視線があまりにも熱いため、馬場輝は少し居心地が悪くなり、今日は本来の用事があったことを思い出した。

カウンターに向かい、馬場輝は店員に言った。「すみません、誕生日ケーキを予約したいんですが、明後日の午後に取りに来ます。」

「かしこまりました!」店員は即座に応じた。「ショーケースの中からお好みのデザインをお選びください。どのタイプとサイズがよろしいでしょうか?」

「私も予約します。同じく明後日の午後に取りに来ます!」井上雪絵も飛び出してきて、店員に向かって言った。

馬場輝は思わず彼女を見上げた。井上雪絵はそれを見てにっこりと笑い、「お兄ちゃんの誕生日なんです。」

馬場輝は軽くうなずき、心道で「なんて偶然だ」と思った。この女の子の兄と絵里菜の誕生日が同じ日とは。

「あなたのお誕生日なんですか?」井上雪絵は馬場輝ともっと話したくて、機会を見つけて尋ねた。

馬場輝は首を振り、妹のことを思い出して表情が柔らかくなり、優しく言った。「妹です。」

「あなたたちも兄妹なんですね?」井上雪絵は笑って言った。「私にも兄がいるんです。」

そう言いながら、井上雪絵はショーケースを指さし、黒いチョコレート風のケーキを指して言った。「チョコレートにしましょうよ。女の子はみんなチョコレートが好きですよ。私も大好きです。」

馬場輝はそれを一瞥して言った。「彼女は甘すぎるのは好きじゃないんです。」

そして緑色のケーキに目を向け、店員に尋ねた。「これは何味ですか?」

店員は答えた。「青りんご味です。甘さの中に少し酸味があって、くどくありません。とても人気があります。」