「ふん」馬場絵里菜は不満そうに口を尖らせた。「あの人たちが私たちの家族にしてきたことに比べれば、これでも手加減してあげたようなものよ」
ボウルを戸棚に戻しながら、絵里菜は続けた。「あの人たちは道理が通じない人たちよ。私たちが譲歩すればするほど、舐められて、つけ込まれるだけ」
「そういう人たちには、向こう以上に冷たくしないとダメ。おばあちゃんたちがお母さんを娘として扱わないなら、私たちだってあの人たちを親戚として扱う必要なんてないわ」
細田家の人々への憎しみは、絵里菜が誰よりも骨身に染みていた。前世で彼女は、細田家の人々の冷酷さを身をもって経験していたからだ。それは彼女に対してだけでなく、母親に対しても同じだった。
二つの人生で積み重なった怨みは、馬場輝と違って、絵里菜は細田家の人々に対して一片の情も持っていなかった。だからこそ、情けも逃げ道も与えなかったのだ。
彼女は心の底から、この冷血な親戚たちと他人になることを決意していた。
馬場輝は妹の言葉の意味を理解し、最後にため息をついた。
細田お婆さんと鈴木夕は絵里菜の家を出て、まだ胸を撫で下ろしていた。
鈴木夕は状況を見て、さらに火に油を注ぐように言った。「お母さん、絵里菜って子は本当に目に余るわ。あんな言葉を言うなんて、おまけに熱湯をかけようとするなんて」
「あの子、前は大人しくて扱いやすそうだと思ってたのに、まさかこんな生意気な性格だったなんて!」細田お婆さんは言った。
この数年、細田登美子の家族とはほとんど接触がなく、年末年始に顔を合わせる程度で、絵里菜のことなどほとんど分からなかった。
今日は麺を持ってきて、この子から何か話を聞き出せると思っていた。子供のことだから、甘いものでも与えれば何でも話すだろうと。
しかし、鳥を捕らんとして矢を失うとはこのことで、何も聞き出せないどころか追い出されてしまい、おまけに陶器の茶碗まで失ってしまった。
細田お婆さんはしばらくため息をついた後、突然鈴木夕を心配そうに見て言った。「夕、お腹は大丈夫?さっきはお母さん本当に心配したわ。病院に行って検査してみましょう。何かあったら大変だから」
鈴木夕はすぐに断った。「大丈夫よ。さっきは絵里菜に腹を立てて胃が痛くなっただけ。お腹の痛みじゃないわ。もう良くなったから」