「やあ、僕は柳澤勇気だ。三番目の先輩だよ」
「僕は西野孝宏、五番目の先輩だ!」
「僕も!古谷浩だ。元は一番下の後輩だったけど、今じゃ君たちの先輩になったよ」
男子たちが競うように自己紹介をする中、最後に唯一の女子が笑顔で口を開いた。「みなさん、こんにちは。私は平野青です。あなたたちの先輩よ」
この武道場では、呼び方が百年以上も続いていた。現代社会とはいえ、今でも先輩後輩の呼び方が残っている。
みんなが次々と話し、人数が少なかったこともあり、うるさく感じることはなかった。
馬場絵里菜は目の前の親しげな同門を見つめながら、顔に淡い笑みを浮かべていた。みんなこんなに打ち解けているなんて、想像していたのとは少し違うな、と。
一人一人の名前を覚えると、全員の自己紹介が終わった後で絵里菜が口を開いた。「先輩方、こんにちは。私は馬場絵里菜です。数日前に十五歳の誕生日を迎えたばかりです」