第475話:喧嘩が始まった

叔父なら我慢できても、叔母は我慢できない!

井上雪絵が振り返ると、背後にいた尖った顔の男が下品な笑みを浮かべているのに出くわした。

ほとんど考えることもなく、雪絵は手を上げて、その男の顔に平手打ちを食らわせた。

下品な男は、この女の子が自分に気があると思っていたのに、まさか平手打ちをされるとは思わず、表情が一瞬凍りついた。

ダンスフロアは既に混雑していたが、雪絵のこの行動に周りの人々は慌てて後ずさりし、巻き込まれないようにした。

結局のところ、雪絵はただの女子学生で、平手打ちは軽い仕打ちだったが、自分の安全が何より大事だった。

身を翻してダンスフロアから離れようとした。

しかし、その下品な男が我に返り、突然雪絵の手首を掴んだ。

「きゃっ!」雪絵は悲鳴を上げた。「この変態!離してよ!」

そう言いながら、雪絵は本能的に反応し、男の急所めがけて思い切り蹴りを入れた!

この一蹴りは慌てた中で力が入っていた。男が痛みの叫び声を上げ、体を折り曲げた。雪絵はそれを見て、小さな拳を握り締め、再び男の顔目がけて殴りかかった。

下品な男の体から力が抜け、雪絵のこの一撃は威力こそなかったものの、男を木の葉のように軽々と地面に叩きつけた!

ダンスフロアの人々は鳥獣散らすように逃げ出し、相原達也と伊藤宏たちもこちらの状況に気付き、急いで駆けつけた。

しかし、その男も一人ではなかった。すぐに仲間たちが状況を察知し、ダンスフロアに来て彼を助け起こした。

音楽が突然止み、クラブの照明が一斉に点灯した。ダンスフロアの状況が一目瞭然となり、大人のグループと未成年のグループが険悪な表情で対峙していた。

先ほどは暗くて相手の顔がよく見えなかったが、照明が点いた今、その変態男が30代の男性だと分かり、雪絵は胸が悪くなった。

「雪絵、どうしたんだ?」相原達也は小声で尋ねた。

雪絵は言いづらかったものの、はっきりと言った。「あの変態が、私を触ってきたの!」

「このガキども、誰が手を出したんだ?死にたいのか?」相手のグループの中で、体格のいい男が、対面の若者たちを睨みつけながら怒鳴った。

「てめえ、口を慎めよ!」伊藤宏は元々気の荒い坊ちゃんで、こういった社会のごろつきなど恐れず、すぐさま気炎を上げて言い返した。

「生意気なガキだな!」