第490章:衝突(1)

ドアを開けると、馬場絵里菜は家全体が昨日来た時よりもずっと清潔で明るくなっていることに気づいた。窓までピカピカに磨かれていた。

「月島!」

馬場絵里菜が部屋に向かって呼びかけると、すぐに二番目の寝室のドアが開く音が聞こえた。

月島涼は相変わらず黒い服を着て、無表情で出てきた。

他の人たちが馬場絵里菜と一緒に来ているのを見て、月島涼も一瞬驚いた様子を見せ、そして挨拶を口にした。「先輩たち。」

寡黙な性格ではあるが、彼は礼儀知らずな人間ではなかった。今この時も表情は淡々としていたが、自ら進んで挨拶をした。

皆を部屋に通し、鈴木墨が部屋を軽く見回してから言った。「大先輩の言う通りだね。この家は本当に一日も住んでいないみたいだ。」

すべてのものが新品で、真っ白な壁にも一つの傷もなく、まるで塗りたてのようだった。

他の人たちが持ってきた物を台所に運んでいる間、月島涼は横で立ったまま、何か言いたげな表情を浮かべていた。

馬場絵里菜はその様子を見て、前に進み出て説明した。「墨先輩が料理を作ってくれるの。」

「調味料がありません!」月島涼は淡々と言った。

鈴木墨はそれを聞いて、笑いながら言った。「私たちが買ってきたよ。新居だから何もないだろうと思って。」

「ガスもありません!」月島涼は更に言った。

鈴木墨:「……」

台所から出てきた他の人たちも月島涼の言葉を聞いて、一瞬固まった。

「ガス...ガスがない?」西野孝宏が前に出て、鈴木墨を見つめながら目を瞬かせた。「先輩、どうしましょう?料理できないじゃないですか!」

今はまだインターネットでガス料金を支払えるような便利な時代ではなく、ガス会社の営業所に行って支払う必要があった。

鈴木墨は少し戸惑い、馬場絵里菜を見たり、他の人たちを見たりして、どうしたらいいか分からない様子だった。

この新居は、ガスだけでなく、電気料金も支払っていなかった。これは月島涼が今日掃除に来て初めて気づいたことだった。

みんなしばらくの間お互いを見つめ合っていた。食材が足りないという問題ではなく、ガスも電気もないとなると、何も作れないのは明らかだった。

「外で食べに行きましょう!」突然馬場絵里菜が言い出した。「食材はここに置いておいて、私と月島のものということにしましょう。どうせこれから料理するときに使うし。」