第514章:新規プロジェクトの計画

夜、馬場長生は重たい足取りで家に入った。

昼間の出来事があり、馬場長生は会社に行く気にもならず、鈴木強のところへ行って夜まで過ごした。

ドアの開く音を聞いて、橋本好美が真っ先に出迎えた。「お帰りなさい!」

一目見て、橋本好美は馬場長生の頬の腫れと口角の傷跡に気付いた。

午後に氷で冷やして腫れはだいぶ引いていたものの、まだはっきりと分かる状態だった。

驚いた橋本好美は急いで前に進み出て、心配そうに尋ねた。「あなた、顔どうしたの?誰かと喧嘩でもしたの?」

その声には驚きが隠せなかった。結婚して何年も経つが、馬場長生が人と手を出すような人間ではないことを知っていたからだ。

馬場長生は目の奥の感情を隠し、橋本好美を安心させようと笑顔を見せたが、それが口角の傷を刺激してしまい、痛みで思わず低く唸った。

「大丈夫だよ、ちょっとした揉め事だけど、心配ない!」馬場長生は軽く流して、橋本好美を心配させないようにと話題を変えた。「今日、宝人を迎えに行ったんじゃなかった?」

橋本好美は眉をひそめながら、馬場長生の頬を見つめ、軽くうなずいた。「ええ、迎えに行ってきたわ。」

靴を脱いで、馬場長生は橋本好美の手を引いてリビングに入ると、ソファーでテレビを見ている馬場宝人と、その隣に座っている馬場依子の姿が目に入った。

二人の子供は顔を上げると、同時に声を上げた。「パパ、顔どうしたの?」

馬場長生はネクタイを緩めながら、ボタンを二つ外し、答えた。「何でもないよ、心配しないで。」

「明日の飛行機のチケットを予約したわ。依子と宝人を連れて京都で夏休みを過ごすつもり。」橋本好美は馬場長生のネクタイを受け取りながら言った。

橋本好美は京都の名家の令嬢で、実家は代々続く学者の家系だった。これが当時、馬場お爺様が馬場長生に橋本好美との結婚を強く勧めた理由でもあり、要するに打算的な面があったのだ。

結婚と言うよりも、十数年前の馬場家は京都の橋本家とはレベルが全く違っていたのだ。

この数年間、東海不動産の京都での事業は橋本家の助けもあり、順風満帆で規模を拡大し続け、馬場お爺様の当初の目論見通りの結果となっていた。

それを聞いて、馬場長生は頷いた。「わかった。両親にそう伝えてくれ。最近は仕事が忙しいけど、時間ができたら京都に行って二人に会いに行くよ。」