第512章:彼女は私と一緒に武道場の近くに住んでいる

馬場絵里菜は状況が全く把握できていなかったが、大まかな意味は理解できたものの……

彼女は今になって、龍栄道場にもう一人の武道家がいたことを知ったのだ!

中川彰館長だけだと思っていたのに!

残念なことに、初めて会った時に師匠が道場を去ることになり、正式な挨拶をする機会さえなかった。

そして馬場絵里菜は師匠がなぜそんなに怒っているのかを理解していた。道場は師門と同じであり、豊田優は師匠の父の弟子だったのに、今は他の道場に移ってしまい、それは師門への裏切りと同じだったからだ。

これが昔なら、武道界の大きなタブーだったのだ!

「師妹、彼らは?」

他の人と比べて、鈴木墨は比較的冷静だった。以前、龍栄道場には十数人の武道家がいて、それぞれが異なる武術を教えていた。しかし近年、墨は一人また一人と師匠たちが道場を去っていくのを目の当たりにしてきた。そして今や、豊田師匠までもが去ってしまった!

心は動揺していたが、すでに麻痺していた。

馬場絵里菜は我に返り、急いで答えた。「この二人は私のクラスメートで、私が夏休みに武術を習っていると聞いて、道場で学びたいと思ったみたいで、連れてきたんです。」

鈴木墨はそれを聞いて頷いたが、少し心配そうに正門の方を見た。

「絵里菜、入りなさい!」

中川彰の声が突然外に聞こえてきた。外での会話を聞いていたようだ。

馬場絵里菜は声を聞くと、すぐに林駆と高遠晴に目配せをし、二人は彼女について応接室に入った。

「師匠」入るなり、馬場絵里菜は先ほどの出来事には触れず、すぐに本題に入った。「この二人は第二中学校の私のクラスメートで、道場に入門したいそうです。」

中川彰はすでにソファに座っており、それを聞いて林駆と高遠晴を見上げた。

二人とも15歳で、同年代の男子よりも背が高く、体つきを見ると運動をよくしているようだった。

頷きながら、中川彰は林駆と高遠晴に言った。「君たちはもう基礎を築くのに最適な時期は過ぎている。この時期から武術を始めるのは、とても大変だぞ。」

これは善意の忠告だった。二人の服装や雰囲気から、中川彰は林駆と高遠晴が裕福な家庭の子供たちだと見抜いており、おそらく幼い頃から苦労したことがないのだろうと思ったからだ。

「苦労は厭いません。」林駆は断固とした口調で言った。