第537章:利益は他人に流さず

馬場絵里菜は口が達者で、罵る時も汚い言葉を一つも使わず、一言一言が相手の心を刺すような言葉ばかりだった。

一人で細田家の四人を相手にし、その反応の速さに目を見張るものがあった。相手がどんな言葉を投げかけても、すぐさま切り返し、少しも情けをかけなかった。

皆の表情は最悪で、細田お爺さんと細田繁は顔を青ざめさせ、細田お婆さんと細田仲男は顔を真っ赤にしていた。

彼らには道理がなく、自分たちもそれを分かっていた。ただ親や兄弟という立場を利用して、細田登美子に感情的な束縛をかけようとしただけだった。

しかし、馬場絵里菜は細田家の人々に対してもはや一片の親愛の情も持っておらず、細田登美子も馬鹿ではなかった。一つ一つの悪事の末に、損をし苦しむのは自分ばかりで、えこひいきもここまでひどくはなかったため、彼女も細田の両親に心が冷めていた。

今日のこの件は、馬場絵里菜にしても細田登美子にしても、どうしても頭を下げるわけにはいかなかった。

彼女たちはお金に困っているわけではないが、意地の問題として、細田家のこの人たちに、今後は誰も彼女たちを侮れないということを分からせる必要があった。

雰囲気は一時凍りついたようになり、ソファーに座る四人はそれぞれ心の中で思案していたが、馬場絵里菜は余裕綽々とした様子で、気ままにこの数人を観察していた。

しばらくして、細田仲男がゆっくりと口を開いた。ただし、その声にはもう先ほどの勢いはなく、最後の確認をするかのようだった。「つまり、あの院を、返すつもりはないということですか?」

今回、細田仲男は細田登美子を見ずに、馬場絵里菜に視線を向けていた。彼は今になって理解した。この一件の主導権は、すべて馬場絵里菜にあるということを。

馬場絵里菜はそれを聞いて、微妙な表情を浮かべながら、細田仲男をじっと見て、ゆっくりと言った。「あの院は借りたものではないのですから、返すも何もありませんよ。」

細田仲男は意外にも頷いた。先ほど彼は心の中で考えていた。この件は、なかったことにしよう。あの院は細田繁が他人に売ったものとして考えよう。そう考えれば、受け入れやすくなる。

細田家の人々があの院にこだわる最大の理由は、実は細田繁が騙されたと感じているからではなく、この家が細田登美子に売られたからだった。