第543章:宗門暗器

「暗器?」

中川彰はこの二文字を聞いて、一瞬表情が固まり、我に返って首を振って笑った。「お前ときたら、いつも変なことを考えているな」

馬場絵里菜はニヤッと笑い、中川彰を見つめながら尋ねた。「師匠、武器は確かに強力ですけど、今は文明社会じゃないですか。刀や剣を持ち歩くわけにもいきませんよね?」

実は馬場絵里菜は一週間前から、自分が何を学びたいのか考えていた。

他の人たちはそれぞれ異なる武器を学んでいて、刀、槍、棒など様々だったが、馬場絵里菜の興味を引くものはなかった。

しかも、彼女は捨仙門心法を身に付けているため、武器を学ぶ必要性はそれほど高くなかった。そこで色々考えた結果、暗器が最も便利で実用的だと思われた。

身の守りとして暗器を数個持ち歩けば、人前で心法を使うのを避けることもできる。一石二鳥というわけだ。

しかし、理想は理想で、現実は...厳しかった。

なぜなら、中川彰は暗器を使えなかったのだ。

「龍栄道場では昔から暗器を学ぶ弟子はいなかった。だから私も使えないんだ」と中川彰は率直に言った。

馬場絵里菜の笑顔が凍りつき、心の中で落胆を感じた。これは何日もかけて考えついたアイデアだったのに。

「そうですか...」願いが叶わず、馬場絵里菜はすっかりやる気を失ってしまった。他の武器は道場の中でちょっと触れる程度で、大刀を腰に差して外出するわけにもいかない。

つまり、他の武器は彼女にとって実用性が低く、実際には役に立たないのだ。

その様子を見た中川彰は、何かを思い出したように立ち上がった。「二人とも少し待っていてくれ。すぐに戻る」

十分後、中川彰は一冊の本を手に持って正庁に戻ってきた。

その本は約五センチの厚さで、表紙は青く、かなり古びて見えた。長年経っているに違いない。

本の側面には埃が積もっており、中川彰はそれを払い落としてから馬場絵里菜に渡した。

馬場絵里菜は怪訝な表情で本を受け取ると、中川彰の声が聞こえてきた。「この本は数年前に書籍を整理していた時に見つけたもので、書斎の隅にある箱の底に押し込められていた」

「暗器に興味があるなら、持ち帰って研究してみるといい。私には使えないから教えられないがね」

馬場絵里菜は聞きながら、その青い表紙に目を落とした。

『宗門暗器』という四文字が目に飛び込んできた。