第565章:章の名前が思いつかない

細田登美子は頷いた。「はい、三軒あります」

都市計画局の職員はそれを聞いて言った。「では、他の二軒も案内してください。あなたの名義の家をまとめて登録しておけば、後の統計も取りやすくなりますから」

人に便宜を図ることは、自分にも便宜を図ることになる。細田登美子は頷いた。

「お姉さん、私も一緒に行くわ」と細田芝子も口を開いた。

家と門に鍵をかけ、細田登美子は数人を連れて、まず自分の家から近い細田繁の家へと向かった。

道中、その職員は細田登美子と気軽に会話を交わした。

「以前は足立区の家なんて大した値段じゃなかったんですよ。良い物件でも、せいぜい1000万円程度でした。あなたは運がいいですね。足立区の再開発に当たって、三軒合わせれば1億円以上の立退き料になりますよ」

「政府の政策が良いんです。私たち庶民も恩恵を受けさせていただいています」と細田登美子は穏やかな笑顔を浮かべながら答えた。

相手は思わず細田登美子を二度見した。資料には37歳と記載されているが、目の前の女性からは中年女性の面影は微塵も感じられず、27歳と言っても年上に見えるほどだった。

足立区のような場所で、これほど手入れの行き届いた女性に出会えるとは。

手入れの良さも一つの要因だが、実際のところ細田登美子は生まれながらの美人タイプだった。肌の張りや透明感、そして全身から醸し出される気品は、生まれつきのものだった。少なくともここ数年、苦労の連続の中で、お金持ちの奥様たちのようにエステに通う余裕など全くなかったのだから。

「師匠、工事はいつ頃始まるかご存知ですか?」と細田芝子が突然尋ねた。

「それはなんとも。立退きを拒否している人たちとさらに話し合いを進める必要があるので、少し時間がかかるかもしれません」その人は気軽な口調で言った。「今日も午前中だけで既に三軒の非協力的な家庭がありましたし、これからもっと増えるでしょう」

「その時になって話がまとまらなければ、他の場所から着工するしかありません。工期が遅れると大きな損失になりますから」

いわゆる立退き拒否者とは、周囲が全て取り壊されても頑として動かない住民のことで、そのため期限までに解決できなくても、デベロッパーは予定通り工事を始めなければならない。