第586章:「焔」組織

伯爵の館。

テレビでは同じように東海不動産のニュースが流れていたが、古谷始はビジネスマンではないため、それに興味はなかった。

豪華で広々としたレストランでは、朝食だけでもテーブルいっぱいの料理が並んでいた。

古谷始は普段の朝食はお粥と卵だけだが、今日が違うのは遠方からの客人が来ているからだ。

テーブルを挟んで古谷始の向かいに座っているのは、清楚な容姿の西洋の少女だった。

少女は二十歳そこそこに見え、朱色の巻き毛が肩まで垂れ、肌は白く、目は深く、鮮やかな青い瞳は特に輝いていた。

朝早く起きたばかりで化粧もしていない素顔でも、その美しさは目を見張るものだった。

少女の本名はキャロライン、日本名は星野離といい、現在世界で最も神秘的で強力な組織「焔」に所属していた。

この神秘的な「焔」組織について、誰もよく知らず、組織の全メンバー七人を見たことがある人はごく少数で、背後で権力を握る首領の真の身元は誰も知らなかった。

そして古谷始は、表向きは東京の天口会の会長だが、その真の身分は「焔」組織のメンバーの一人だった。

数年前、国際的に最も強力な組織は国際暗殺組織と呼ばれ、女性の暗殺者を育成する組織で、毎年数百人の少女の中から最も優秀な10人を暗殺機関に選抜していた。

血月、火狐、黒猫、蜂、クラゲ、青狐、赤蠍……

これらの殺し屋の世界の伝説は、今でもアンダーグラウンドで広く語り継がれている。

しかし、2年前、世界ランキング1位の元特殊工作員である血月が、暗殺機関を退職した十数名の特殊工作員と、世界各地に潜む腕利きたちを集め、わずか1ヶ月で国際暗殺組織を闇の世界から完全に消し去り、無数の暗殺機関に囚われていた少女たちを救出した。

「焔」組織は、この国際暗殺組織の掃討に参加したメンバーの一つだった。

国際暗殺組織の崩壊に伴い、「焔」組織は国際的に最も神秘的な組織となった。

ただし、国際暗殺組織の掃討任務の後、「焔」組織の全メンバーは姿を隠し、世界各地に散り、2年の間、何の情報も漏れなかった。

組織の七人のうち二人が、今この時、日本の東京にいるとは誰が想像できただろうか。

「あぁ……日本料理が恋しかった。大好きな小籠包と海老餃子、それに美味しい鶏スープ……」