第605話:誘拐された!

この出来事は一瞬のうちに起こり、あまりにも突然だったため、馬場絵里菜さえも最初は反応できず、周りの人混みの中にいた人々も何が起きたのかわからないうちに、すべてが終わっていた。

我に返った絵里菜は他のことを考える余裕もなく、路肩に置かれた施錠されていない自転車に素早く駆け寄り、一気に跨って、足に力を込めると、自転車は「シュッ」と音を立てて飛び出した。

古谷始と星野離は目を合わせ、その眼差しには驚きの色が浮かんでいた。先ほどの出来事は二人の目からも逃れることはできなかったが、二人が驚いたのは、白昼堂々、大勢の目の前で人を車に無理やり連れ込んで連れ去るような大胆な行為があったことだった。

古谷は馬場絵里菜を心配し、追いかけようと一歩踏み出したが、星野が眉をひそめて彼を見つめながら言った。「まさかそのまま追いかけるつもりじゃないよね?どこを追いかけるの?」