夏目沙耶香はローズエンターテインメントと契約を結んだ後、京都へ行って撮影を始めたため、現在の事務所のタレント陣についてはあまり詳しくなかった。しかし、先ほど橋本通から聞いた話によると、現在事務所と契約しているのは、すべて将来性のある新人だという。
結局のところ、ローズエンターテインメントは設立されて間もない新しい事務所で、ベテランタレントの多くはこのような事務所と契約することを好まない。主な理由は、仕事の保証がないことを心配しているからだ。
だから考えるまでもなく、目の前に現れたこの人物も事務所と契約したタレントの一人だろうと分かった。そのため、夏目沙耶香は目をそらすことなく、むしろ好奇心を持って彼を見つめた。
その少年は十八、九歳くらいに見え、背が高くスリムな体型で、肌が白く、眉目の間には爽やかな雰囲気があり、目は驚くほど輝いていた。
沙耶香の視線を感じたのか、その少年は夏目沙耶香と目が合い、自分より数歳年下に見える少女を見て、唇を上げて眩しいほどの明るい笑顔を見せた。
次の瞬間、二人はすれ違い、夏目沙耶香はその少年が橋本通のオフィスに入っていく姿を見つめていた。
「清潔感があるね」夏目沙耶香は視線を戻し、何気なくつぶやいた。そして隣にいる橋本社長の秘書に尋ねた。「花音さん、今の人は事務所のタレントですか?」
豊田花音は頷いた。「はい、事務所が最近契約した新人です。浅見満といって、さっき橋本社長が拓海先生に任せると言っていた新人です」
「あの人なんですね?」夏目沙耶香は少し驚いて目を丸くし、気づいて豊田拓海に向かって言った。「拓海さん、いい子だと思います。引き受けたらどうですか」
豊田拓海は迷わず首を振った。「やめておくよ」
夏目沙耶香ももちろん冗談で言っただけだった。少し自分勝手かもしれないが、豊田拓海に他のタレントの面倒を見てほしくないと本当に思っていた。
事務所を出た後、夏目沙耶香はそのままミリオンドラゴン別荘地の自宅へ向かった。
贅沢で豪華な巨大な別荘は、一等地のミリオンドラゴン別荘地でも際立つ存在感を放っていた。夏目グループは東京の四大企業の一つで、グループの事業範囲は非常に広く、最も有名なのは、本社を京都に置き、多くの人気スターを抱える帝天芸能プロダクションだ。
「お嬢様がお帰りになりました!」