古谷始は今日自分で運転せず、部下に運転手を任せていた。
その男は濃い顎髭を生やしており、以前古谷始が怪我をした時に足立区まで迎えに行った髭面の男だった。
髭面の男は馬場絵里菜のことを覚えていたが、こんな重要なパーティーで、ボスの同伴者が彼女だとは思いもよらなかった。
しかし、彼はただ心の中で不思議に思うだけで、バックミラー越しに後部座席でボスと並んで座っている女性を見て、なぜか相性が良さそうに見えた。
車は北区を離れ、港区へと向かった。
今年の朗星パーティーは、上流階級を代表する場所、水雲亭で開催されることになった。
すでにパーティーの入場時間となり、この日の水雲亭は会員の夜間利用を一時停止し、すべての人員をこの年に一度の東京ビジネス界の盛大な集まりに投入していた。
玄関前には次々と高級車が到着し、東京で重要な地位を占める人々が車から降り立っていた。
クラブの外から駐車場の曲がり角まで、柔らかく鮮やかな赤いカーペットが敷かれ、その両側には警備員が秩序を維持し、警備員の後ろには本州の各テレビ局や新聞社のメディア記者たちが並んでいた。
フラッシュが絶え間なく光り、朗星パーティーに出席する人々の正面写真を捉えようとしていた。
最新型の高級メルセデス・ベンツが赤いカーペットの端に停車し、馬場長生は淡いグレーの上品なスーツ姿で車から降り、紳士的で優雅な動作で橋本好美の差し出した手を取り、しっかりと握った。
「馬場長生!」
「早く馬場長生を撮って!」
「馬場社長、こちらを向いてください!」
記者たちは馬場長生の姿を見るや否や騒然となり、フラッシュが狂ったように光り、呼びかける声が途切れることはなかった。
馬場長生は橋本好美の手を取り、親しみのある笑顔で周りの記者たちに手を振り、約10秒間その場に留まった後、素早く水雲亭の玄関に入った。
次にストレッチリムジンが途切れることなく赤いカーペットの端に停車し、銀白色の髪をした白川昼が最初にドアから姿を見せた。
人々は端正な顔立ちの白川昼を見て、その場の雰囲気が一瞬凍りついた。明らかにこの人物についてはまだ馴染みが薄かった。