縁?
馬場絵里菜は心の中で冷笑した。
彼女は井上雪絵との縁は気にしていなかった。
井上裕人?因縁というほうが相応しい。
その時、井上雪絵は突然絵里菜の手を取って言った。「絵里菜、いつか時間ある?うちに遊びに来ない?」
「え?」馬場絵里菜は一瞬戸惑い、反応が遅れたように「あなたの家に?」
井上雪絵は急いで頷いた。「そう、お爺さんが、あなたを家に招待してって言ってたの」
井上お爺さん?
馬場絵里菜は表情を少し固くし、少し考えてから意外にも頷いた。「いいわよ、開校前なら都合つくわ」
母が入院していた時に井上お爺さんが何度も見舞いに来てくれたことを考えると、直接お礼を言いたいと思っていた。今がちょうどいい機会だった。
馬場絵里菜があっさり承諾したことに、井上雪絵は嬉しそうに頷いた。「じゃあ、この二、三日のうちに予定を決めて電話するね」
馬場絵里菜は笑顔で頷いた。
傍らに座っていた井上裕人は、二人の会話を聞いていて、眉を上げ、意味深な表情で馬場絵里菜を見た。
井上邸に遊びに行く?
そのとき、バーラウンジの奥から、突然大勢のウェイターがカートを押して入ってきた。
パーティーの参加者たちはそれを見て、一斉に笑顔を浮かべ、中央の円形ステージに集まり始めた。
馬場絵里菜が不思議に思っていると、古谷始が彼女の肩を軽く叩いて言った。「行こう。面白いことがあるって言ったでしょ。見に行こう」
馬場絵里菜は興味深そうに目を瞬かせた。井上裕人とのことで、このパーティーに来た理由を忘れかけていた。古谷始が面白いことがあると言っていたのだ。
すぐに立ち上がって古谷始について行った。
井上裕人は二人の後ろ姿を見て、なぜか胸が詰まる思いがした。
「お兄ちゃん、私たちも見に行きましょう!」井上雪絵は井上裕人の手を引いて、後を追った。
中央の円形ステージはとても大きく、人々は周りに立ち止まり、ステージ中央の布で覆われたカートを興味深そうに見つめていた。
馬場絵里菜もこの時気づいたが、周りの人々は皆、何か期待に胸を躍らせているようだった。スーツ姿の男性も、イブニングドレス姿の女性も、目には純粋な輝きを宿し、期待と喜びに満ちていた。
「古谷始、これは何をするの?」馬場絵里菜は好奇心に駆られて尋ねた。