ソファーエリアの一件は一段落したようで、パーティーは徐々に通常の状態に戻り、人々は再び会話を始めた。
「絵里菜お姉ちゃん!」井上雪絵が声を上げ、急いで駆け寄ってきた。
しかし、その「絵里菜お姉ちゃん」という一言が、屋上から降りてきた馬場長生の耳に偶然にも入ってしまった。
娘の名前は最近、細田登美子の口から偶然聞いたばかりで、それ以来しっかりと心に刻んでいた。そのため、今の彼は「絵里菜」というこの二文字に異常に敏感で、やや騒がしいパーティーの中でも、はっきりとその二文字を聞き取ることができた。
馬場長生は足を止め、人混みを通して声の主を探そうとした。
しかし、パーティーには人が多すぎて、自分が聞き間違えていないと確信していても、誰が「絵里菜」という名前を呼んだのか見つけることができなかった。