第637話：スカウトに見つかる（1）

最初二人が付き合い始めた頃、馬場輝はようやく主任に昇進したばかりで、月給はたった千数百元だった。

彼の家庭環境も理解していた。裕福な家庭ではなく、そうでなければバーで働くこともなかっただろう。

当時、橋本恵那は馬場輝のハンサムな外見に惹かれ、お金がないことなど気にしていなかった。

しかし目の前の車を見て、橋本恵那は思わず心の中で問いかけた：これはどういうこと？

この車は車に詳しくない人が見ても、少なくとも1000万円以上するはずだ。馬場輝にこんな車が買えるはずがない。

もしかして……

不快な考えが橋本恵那の頭に浮かび、眉をひそめた。

橋本恵那の目には、馬場輝はあの整った顔立ち以外に、こんな高級車を買える手段なんてないはずだった。

それなのに、なぜ私を見下すことができるの？

その場で怒りを込めて冷笑し、橋本恵那はヒールを鳴らしながら怒りに燃えた背中を見せて足早に立ち去った。

……

「ママ、さっきのオレンジ色のリボンの方が可愛かったと思う。深緑は年寄りくさいわ、パパに似合うくらい。」

帝京ショッピングモールの最上階のブランドショップで、馬場依子は橋本好美の傍らでそう言った。

隣にいた馬場宝人は即座に不機嫌な口調で反論した：「オレンジは野暮ったいよ、姉さんに似合うね！僕は落ち着いた深緑が好きなんだ！」

「この生意気な！お姉ちゃんのことを野暮ったいなんて言うの？」馬場依子は即座に怒りで鼻から煙を出しそうになった。彼女は自分の美的センスを疑われることが一番嫌いだった。

オレンジ色の方が明るくて、子供らしいのに。

13歳の小僧が、何が深緑よ、大人ぶって！

夏休みの間、馬場依子と馬場宝人は橋本好美に連れられて京都で過ごし、今は新学期が近づいていた。三人は昨日東京に戻ったばかりで、今日はちょうど暇だったので、一緒に買い物に出かけた。

二人の子供の言い争いを見ながら、橋本好美は幸せで面白く感じながらも、仲裁に入った：「もういいわ依子、弟がこういうのを好きなのは知ってるでしょう。彼が気に入ったならそれでいいのよ。」

「私はただ似合わないと思っただけよ、アドバイスしただけ。」馬場依子は口を尖らせ、軽く鼻を鳴らした。