第690話:まさかお前という小娘か

古谷塀は言葉を聞くと、ドアの横に体を寄せた。「絵里菜さんですね?どうぞお入りください」

馬場絵里菜は遠慮することなく、そのまま門の中に入り、井上裕人を一瞥もせずに通り過ぎた。

後ろにいた井上裕人は、馬場絵里菜の細い背中を見てただ口元を上げて微笑み、スリッパを履いて後に続いて井上邸に入った。

静かな石畳の小道があり、両側には緑の植物と花壇があり、すべてが丁寧に手入れされていた。馬場絵里菜は歩きながら好奇心を持って見回したが、井上邸が本当に驚くほど広いことに気づいた。

しばらく歩いてようやく大理石で作られた噴水が見えてきた。その噴水の向こうに井上家の本邸があった。

井上雪絵はすでに玄関で首を長くして待っており、馬場絵里菜の姿を見つけると、すぐに興奮して手を振った。「絵里菜!」