馬場依子が謝ると、橋本好美の心は柔らかくなった。
「お母さんがあなたのためを思ってのことだと分かってくれればいいの」橋本好美は安堵の笑みを浮かべながら、馬場依子の頭を優しく撫でた。
しかし、馬場依子の次の言葉に、橋本好美は凍りついた。
馬場依子は自信なさげな小さな声で言った。「お母さん、お父さんが芸能事務所と契約することを許してくれたの」
その言葉を言い終えると、馬場依子は怖くなって馬場長生の後ろに隠れた。
橋本好美はダイニングテーブルの横に立ったまま、聞き間違えたのかと思った。
娘を見て、そして夫を見た。
最後に、信じられない様子で尋ねた。「あなた、許したの?」
馬場長生は軽くため息をつき、頷いた。「依子はこのチャンスを大切にしたいと言っているし、勉強に支障が出ないことも約束してくれた。もし成績が下がったら契約を解除すると言い聞かせたんだ」