馬場絵里菜は頷いた。「そうよ」
馬場輝は非常に意外に思った。井上雪絵の様子から裕福な家庭であることは感じ取れたものの、まさか井上財閥のお嬢様だとは思いもしなかった。
「彼女から何の電話があったの?」馬場輝は好奇心を持って尋ねた。
馬場絵里菜はソファーに戻って座り、馬場輝を見上げて言った。「井上邸に招待したいって。前に約束したの」
そう言って、馬場絵里菜は馬場輝に尋ねた。「あなたも来てほしいって。行く?」
「やめておくよ」馬場輝は考えるまでもなく首を振って断った。そんな超一流の名家には、きっと面倒な作法が山ほどあるだろう。相手がどんなに親切でも、居心地が悪くなるに違いない。
馬場絵里菜はその様子を見て微笑んだ。こうなることは分かっていたので、それ以上は強要しなかった。