第694話:この可憐な花に手を出すつもり?

馬場絵里菜は軽く頷いて、受け取った後に「ありがとう」と言った。

馬場輝は来なかったので、井上雪絵は少し落ち込んでいたが、それを表に出すことはなかった。なぜなら、今日は元々馬場絵里菜を家に招待する日だったからだ。井上雪絵にとって、馬場輝が来られたら嬉しい誤算だったが、来なくても構わない。絵里菜が来てくれただけで十分だった。

今日のお客様は馬場絵里菜一人だけだったが、井上家は彼女が一人で、しかも未成年だからといって軽んじることはなかった。夕食の豪華さは、馬場絵里菜に五つ星レストランに迷い込んだかのような錯覚を与えた。

様々な料理が大きなテーブルに並べられ、鶏肉、アヒル肉、魚、肉、シーフード、野菜と何一つ欠けることなく、十数品もあった。

馬場絵里菜は、これが井上家の普段の夕食の規模なのかどうかは分からなかったが、彼女にとっては、今や数十億の資産を持っていても、このような規模の家庭での夕食は十分贅沢だった。