馬場絵里菜は軽く頷いたが、心の中では少し笑いたい気持ちがあった。
一体全体どういうことなんだろう。自分の会社の人が馬場依子というお芝居上手を見つけたなんて。
とはいえ、話は別として、馬場依子のイメージと雰囲気は確かに悪くなく、芸能界に進出する素質はある。ただ、彼女のことがどうしても好きになれない。それなのに彼女が契約しようとしている会社が、ローズエンターテインメントなのだ。
馬場依子は馬場絵里菜の目から羨望や嫉妬の色を探ろうとしたが、明らかに失望に終わった。
馬場絵里菜の心は全く動揺せず、まるでどうでもいい話を聞いたかのようだった。
エレベーターは東海不動産のフロアまで上がり続け、馬場絵里菜は馬場依子のことを考えていたため、馬場長生が彼女に向ける未練がましい視線に全く気付かなかった。