「では橋本社長様、ご配慮ありがとうございます」と馬場長生は言った。
橋本通を見かけたことで、以前の記憶が間違っていなかったことが証明された。彼が会社を代表して朗星パーティーに出席できるということは、ローズエンターテインメントで最も実権を持つトップだということだろう。
そして馬場輝については、おそらく副社長の職位だろう。
なぜなら、他の部署の部長であれば、社内の人々は通常「馬場部長」と呼び、「馬場社長」とは呼ばないからだ。
帰り道で、馬場依子は助手席に座ったまま考え事をしていた。彼女の頭の中には、さっきの人の姿が何度も浮かんでいた。
そして、もし聞き間違えでなければ、彼はエンターテインメント会社の社長なのだろうか?
こんなに若くして既に社長になっているなんて、本当にすごい。
「依子、何を考えているの?」娘が物思いに耽っているのを見て、馬場長生は思わず尋ねた。
馬場依子は声を聞いて我に返り、急いで自分の胸の内を笑顔で隠した。「何でもないの、パパ。ただ突然夢に一歩近づいた気がして、少し現実感がないだけ」
馬場長生はそれを聞いて思わず微笑んだ。「私の依子はとても優秀だから、どんな夢を持っていても、きっと将来叶えられると信じているよ」
馬場依子は軽く頷き、馬場長生を見つめながら言った。「パパがこんなに応援してくれて、ありがとう。パパは本当に世界で一番素敵なパパよ」
世界で一番素敵なパパ?
馬場長生は軽く笑ったが、目の奥には苦い色が浮かんでいた。
自分は世界で一番素敵なパパなんかじゃない。
その夜、馬場長生と橋本好美は馬場依子を連れて馬場お爺様の家を訪れた。
馬場お爺様は既に何年も前に引退していた。当時、会社の継承権を使って馬場長生に橋本好美との結婚を強要した後すぐに、約束通り会社全体の権限を馬場長生に譲渡した。
その後、馬場グループは馬場長生の経営の下で日々発展を遂げ、馬場お爺様は完全に手を引いた。ただし、会社には依然として彼の腹心が存在していたため、会社の出来事は常に最初に知ることができた。
これらのことについて、馬場長生も心の中では分かっていた。しかし、父の腹心たちも会社に忠実であったため、特に気にはしていなかった。
そのため今日帰ってくるとすぐに、馬場お爺様に書斎で個別に話をするよう呼ばれた。