クラスメイトたちが一人一人、不本意ながら掃除を始めると、馬場絵里菜と馬場依子は前後して教室を出た。
職員室のドアをノックすると、菅野將に机の前に呼ばれた。
「菅野先生」二人は軽く頭を下げて挨拶し、声を揃えて呼びかけた。
クラスで最も成績の良い二人の生徒を前に、菅野將の表情も柔らかくなり、口調も少し優しくなった。
「先生が二人だけを呼んだのは、話があるからだ」
馬場絵里菜は軽く頷き、真剣に聞く姿勢を示した。
馬場依子はさらに直接尋ねた。「先生、何のことですか?」
菅野將は微笑み、とても気軽な様子で言った。「君たちも覚えているだろうけど、前学期に学校代表として市のオリンピック数学コンテストに参加したよね?」
二人は頷いた。
菅野將はそれを見て、続けた。「当時先生が言ったことを覚えているかな。優秀な成績を収めた人は大学入試で加点されるだけでなく、学校の広報ビデオにも出演できるって」
馬場絵里菜はハッとして、思い出したような表情を見せた。
確かにそんなことがあったような気がする。ただ自分は大学入試の加点に関心があったので、この部分は無視していた。
一方、馬場依子は目を輝かせた。彼女がコンテストに参加した理由は、まさにこの学校広報ビデオの撮影のためで、カメラの前に立ちたかったのだ。
彼女も忘れていたが、学校がまだこのことを覚えていたとは思わなかった。
喜びを感じながら、馬場依子は少し興奮して言った。「菅野先生、私たちがこの広報ビデオを撮影できるということですか?」
「もちろんだよ、これは当初約束したことだからね。君たちは学校に栄誉をもたらしたんだから、学校の広報ビデオに出演する資格は十分にある」と菅野將は言った。
馬場依子は心の喜びを抑えながら、表面上は微笑んで頷いた。
一方、馬場絵里菜は困ったような表情を浮かべていた。
彼女は本当に広報ビデオなど撮影したくなかった。彼女の印象では、こういった青春系の広報ビデオは大抵、制服を着て緑の芝生の上を走ったり、校庭でスカートをはいて回ったりして、しかも顔には活力に満ちた陽気で大げさな作り笑いを浮かべなければならない。
考えただけで鳥肌が立つ。