第707章:新学期早々試験

そう言いながら、高橋桃の視線は高遠晴の手に握られたハンカチに落ちた。「これは私が初めて作ったハンカチなの。でも結構満足してるわ。気に入らないなんて言わないでね」

「そんなことないよ」高遠晴はそのハンカチを丁寧にしまいながら言った。「とても気に入ったよ」

高橋桃はその言葉を聞いて、思わず嬉しさがこみ上げ、瞳に光が宿った。「本当?よかった。気に入らないんじゃないかって心配してたの」

彼女は高遠晴がいつも品質や細部にこだわる人だということを知っていたので、本能的に自分のハンカチが気に入らないんじゃないかと心配していた。でも彼が直接気に入ったと言ってくれたなら、きっと本当に気に入ってくれたんだろう。結局、高遠晴は表面上で人に取り繕うような人ではないはずだから。

そう考えると、高橋桃の心は次第に落ち着き、自然な様子になった。「もうすぐ朝読書の時間だから、教室に戻りましょう!」

高遠晴は軽くうなずくと、高橋桃が先に彼を追い越して、教室の方向に小走りに向かっていくのが見えた。後ろのポニーテールが体の動きに合わせて左右に揺れていた。

彼女の後ろ姿を見つめながら、高遠晴の金縁メガネの奥の目元に笑みが浮かんだ。もう一度手の中の小箱を見てから、やっとクラスへと向かった。

馬場絵里菜はチャイムと同時にクラスに滑り込んだ。

夏目沙耶香は馬場絵里菜を見るなり、「来ないのかと思ったよ!」と声をかけた。

カバンを置きながら、馬場絵里菜は軽く息を整えてから言った。「すごく混んでたの。双橋駅で降りて学校まで歩いてきたのよ」

言い終わるか終わらないかのうちに、菅野將が両手を後ろに組んで教室に入ってきた。それまでの騒がしい雰囲気は一瞬で静まり返った。

「学級委員長、全員揃ってるか?」菅野將はすぐに夏目沙耶香に向かって尋ね、表情はいつものように厳しかった。

夏目沙耶香はうなずいた。「全員いますよ、先生」