夏目沙耶香は馬場絵里菜のことを思い出し、思わず腕時計を見て、そして教室の入り口を見た。「もうすぐ7時半なのに、彼女はまだ来ていないわね?」
藤井空:「たぶん渋滞じゃないかな。さっき学校の外は車展示会みたいだったよ」
林駆も言った:「高遠晴もまだ来ていないの?」
「まだよ」夏目沙耶香は首を振った。
そのとき、高遠晴は教室に向かう途中で、高橋桃に行く手を阻まれていた。
水場の外の人気のない角で、高橋桃は少し頭を下げ、緊張した様子で唇を噛み、無意識に内股の姿勢で立っていた。
向かい側では、高遠晴が片方の肩にバッグをかけ、無表情で明らかに緊張している高橋桃を見つめ、思わず尋ねた。「何か用?」
さっきまで彼はそのまま教室に行くつもりだったが、突然高橋桃に呼び止められ、ここに連れてこられた。彼女の様子から見ると、明らかに彼に用があるようだった。