第705章:始業式

九月一日、始業式!

馬場絵里菜は前日、わざわざ北区から足立区の家に戻って泊まった。現在の立ち退き工事がどの段階まで進んでいるのかわからないが、少なくともまだ着工していなかった。

早朝、馬場絵里菜はすでに早起きに慣れていた。今日は武道場に行く必要はないが、それでも彼女は5時きっかりに庭で馬歩(マーブー)の姿勢を取り始めた。

この数日間、心法の修練はますます上達し、その甘い実りを味わうことができた。だから、どんなに苦しくても疲れていても、毎朝の練習を怠ることはなかった。

6時半、洗顔を済ませて制服に着替えた馬場絵里菜は、時間通りに家を出た。

交差点にあるまだ営業している朝食店で朝食を食べ、いつものように公共バスに乗って学校へ向かった。

おそらく今日は始業式のせいで、道路は特に渋滞していた。特に第二中学校の近くでは、道路が駐車場のように詰まっていた。

東京の名門高校として、子供を送り迎えする家庭はみな自家用車だった。今日は高校1年生の入学日で、第二中学校の門前には高級車が集まり、見知らぬ顔や馴染みの顔が絶えず、高校1年生の後輩たちは皆、保護者に付き添われて来ていた。

サファイアブルーのブガッティ・ヴェイロンが第二中学校の正門の真向かいに停車した。井上雪絵はさっとカバンを手に取り、井上裕人を見て言った。「お兄ちゃん、直接学校まで送ってくれてありがとう」

井上裕人は片手をハンドルに置き、リラックスした姿勢でシートに寄りかかりながら、井上雪絵を見て口角を上げて微笑み、尋ねた。「本当に中まで送らなくていいの?」

「幼稚園じゃないんだから、自分で入れるわ」井上雪絵は手を振った。「早く行って、ここで交通の邪魔にならないで。見て、前の車が全然動いてないわ」

井上裕人はうなずき、窓越しに第二中学校の門前に溢れる人の流れを見た。運良く彼女を見かけることができるかもしれないと思った。

しかし車の流れが視界の大半を遮っていた。井上裕人は視線を戻し、井上雪絵が車を降りた後、車を発進させた。

黒いメルセデス・ベンツのセダンが数分間うろうろした後、ようやく適切な駐車スペースを見つけた。

車内で、馬場宝人はカバンを手に取った。「お母さん、行ってくるね」