第704章:必ずベルトを締めて復習する

細田仲男は自ら箱を透明テープで封をしながら、言葉を返した。「彼は高校3年生になるんだ。お母さん、私が高校3年生の時どうだったか覚えてる?これは彼の人生で最も重要な一年だ。彼はベルトを締めて真面目に勉強しなければならない。一流大学に入れなくても、最低でも大学の合格ラインは超えてもらわないと!」

「ああ」老婦人は軽くため息をつき、頷いた。

細田仲男は箱を整理しながら続けた。「梓時の成績は中途半端なんだ。私と春は当時の大学入試で680点以上取ったんだぞ。萌の方は心配いらないけどね」

老婦人にとって、この孫は一人しかいないので、彼の悪口は聞きたくなかった。すぐに言い返した。「でも梓時も頭は悪くないわよ。賢いわ」

「わかってるよ」自分の息子のことを理解していないわけがない。細田仲男は言った。「彼はね、賢さを正しいところに使っていないんだ。彼を少し追い込まないと、自分の限界がどこにあるのか全く分からないままだ!この一年間しっかり勉強すれば、大学に合格するのは問題ないはずだ。だからお母さん、あなたとお父さんがどれだけ彼を可愛がっていても、この一年は甘やかしてはいけないよ」

「わかったわよ」老婦人は言いながら、時計を見上げた。「もう9時近いのに、まだ帰ってこないのね?」

「大丈夫だよ、春のところはここから近いし、タクシーで10分で帰ってくるさ」と細田仲男は言った。

その時、伊藤春の家では。

「お母さん、帰っていいよ。交差点まで行って自分でタクシーを拾うから」

別荘の入り口で、細田梓時は伊藤春に言った。

伊藤春は肩まで伸びた長い髪を下ろし、シルクの部屋着のワンピースを着て、スリッパを履いていた。

最近、水雲亭でのエステは彼女と細田登美子、細田芝子の定番になっていた。ほぼ毎週時間を作って行き、普段も家でも身だしなみとスキンケアに気を使うようになっていた。

今の伊藤春は、全体的に輝いていて、肌の状態も数歳若く見え、さらに丁寧にセットした髪型と相まって、独特の魅力を放っていた。以前の結婚生活に縛られていた自分とは全く別人のようだった。

彼女の外見や雰囲気の変化は、周りの人にも彼女への態度の変化をもたらした。例えば細田梓時は、母親の変化を見て心から嬉しく、誇りに思っていた。誰だって自分の母親が毎日きれいでいることを望むものだろう?