そのとき、スタッフがなんとブースにコーラの缶入り一箱を補充した。
コーラも食材なの?
バーベキューにコーラ、野鶏が仙鶴に変わる。
全員の目が輝き、そのコーラ一箱を見つめて目を光らせた。
「コーラを奪え!」
「コーラを奪え!」
「コーラを奪え!」
……
叫び声は波のように高まり、先ほどまでリードしていることで喜んでいた1組の生徒たちは一斉に静かになった。
1組の第3走者は女子だった。
鈴木由美がスタートラインに戻った瞬間、馬場絵里菜が飛び出し、その速さは目を見張るほど速かった。後ろの男子が距離を縮めようとしても、全く追いつけなかった。
追いつけないどころか、むしろ徐々に引き離されていく傾向にあった。
「絵里菜ちゃん、すごく速いね!」
夏目沙耶香は目を大きく見開き、信じられないという表情をしていた。
林駆たちも呆然と見ていた。グラウンドを疾走し、ポニーテールが風になびいている女子は、馬場絵里菜?
こんなに速く走れるなんて!
しかし、馬場絵里菜のスピードがリードしていても、1組の生徒たちはやや落胆していた。みんなあのコーラ一箱が欲しかったが、女子の絵里菜では持ち上げられないだろうと思ったからだ。
「絵里菜、手羽先でもいいよ!」
「そう、手羽先でもいい!」
「手羽先も重いんじゃない?」
「持てるものなら何でもいいよ。」
……
1組のクラスメイトが声を上げ始め、飲み物が取れなくても大丈夫、他のものを取ればいいと言っているようだった。
しかし次の瞬間、会場にいた全員が凍りついたように立ち尽くし、雷に打たれたような表情で目を見開いた。
馬場絵里菜がブースに駆け寄り、何も言わずに24缶入りのコーラ一箱を持ち上げ……
そして……
そのまま……
肩に担いだのだ!
抱えるでもなく、両手で持つでもなく、まるで大男のように、そのコーラ一箱をそのまま肩に担いだのだ!
食材を補充していたスタッフも呆然としていた。馬場絵里菜がポニーテールをしていなければ、男子だと思ったかもしれない。
しかも馬場絵里菜の動きは流れるように滑らかで、まったく苦労している様子がなく、肩に担いだ後すぐに振り返って走り出した!
正面から来た2位の選手はちょうど最も近い距離でこの光景を目撃し、幽霊でも見たかのような表情で自分とすれ違う馬場絵里菜を見ていた。