第755章:そんな考えはない

高遠晴は表情を少し固めながら、疑問を浮かべた。「私はエビを一本だけ焼いたの?そんなことないでしょう……」

その口調は、まるで本当に覚えていないかのようだった。

「冗談はよせ!」藤井空は彼を睨みつけた。「自分がどれだけ焼いたか、わかってるだろ?」

「それに!」林駆が突然言い出した。「今日の昼、高橋桃が車酔いすると言ったとき、お前は自分のベッドで横になるように言ったじゃないか」

「そうそう!林駆が言わなかったら忘れてたよ!」藤井空は急いで頷いて同調した。「お前はまだ高橋桃と何もないって言うの?もっとわかりやすくしたら馬鹿でもわかるよ。俺がお前の家に行っても部屋にすら入れてくれないのに、ましてやベッドに横になるなんて!」

二人は次々と事実を細かく分析して目の前に並べ、まるで取り調べをするような態勢だった。

主に高遠晴に何かを認めさせようとしているわけではなく、これらの行動が非常に異常だったからだ。特に高遠晴の場合は、非常に、特別に、そして極めて異常なことだった。

皆は長年の親友で、お互いのことをよく知っているではないか?

林駆が最初に馬場絵里菜を好きになったとき、すぐに見抜かれたのと同じだ。

林駆はベッドに座り、表情を沈め、目には感情が揺れ動いているようだった。何かを考えているようだ。

彼は恋愛経験がなく、女の子を好きになったこともなかったので、それがどんな感覚なのか全くわからなかった。高橋桃については特に考えていなかったが、二人の友人にそう指摘されると、自分でも少し変だと感じ始めていた。

考えた末、高遠晴は向かいの二人に誠実な表情で尋ねた。「じゃあ、俺はどうしたんだと思う?」

林駆:「……」

藤井空:「……」

藤井空は高遠晴に呆れて思わず笑った。「いや、お前どうなってるんだよ?自分が高橋桃を好きかどうか、自分でわからないの?」

林駆も眉をひそめ、真剣な表情で高遠晴に言った。「高遠晴、お前まさか一時の気まぐれで高橋桃を弄んでるんじゃないだろうな?そんな考えがあるなら早めに捨てた方がいい。馬場絵里菜の面子を考えても、高橋桃にそんな冗談は通用しない。相手は女の子だぞ、もし本気にしたらどうする?」

高橋桃を弄ぶ?高遠晴はそんな考えは全くないと確信していた。

すぐに首を振った。「そんなつもりはない」