その時、船室から他の学生たちが走り出てきた。菅野將がよく見ると、先頭は高遠晴で、その後ろには林駆、藤井空、月島涼が続いていた。
彼らに戻るよう声をかけようとしたが、数人が一斉に船尾へ走っていくのを見た。どうやら救助員が泳いで戻ってきたので、みんなが助けに行ったようだった。
菅野將はそれを見て言葉を飲み込み、話を変えた。「みんな気をつけて、端から離れていなさい」
数人の男子学生が力を合わせて、溺れた高橋桃をまず引き上げ、次に救助員を引き上げた。
船尾のスペースが狭かったため、馬場絵里菜と沙耶香は近づかなかった。
人々を引き上げると、高遠晴はすぐに高橋桃を横抱きにし、顔色を青くしながら彼女を抱えて急いで船室へ向かった。他の人たちもそれを見て慌てて後を追った。
船室に戻ると、高遠晴は高橋桃をすぐに床に平らに寝かせた。高橋桃は全身びしょ濡れで、顔色は青白く、口からは絶えず水が流れ出ていた。
何人かの学生たちも怖がって、傍らで見ているだけで声を出す勇気もなく、ただ心配そうな表情を浮かべていた。
高遠晴は高橋桃のお腹を二回押した。押すたびに彼女の口から湖の水が少し流れ出た。続いて彼女の頬を軽く叩き、小声で呼びかけた。「桃?桃?」
反応はなかった。
高遠晴はお腹を押し続けた。
さらに何度か押すと、高橋桃は突然大量の湖水を吐き出し、激しく咳き込み始めた。
「目を覚ました!」
「よかった、本当に怖かった!」
「大丈夫でよかった、本当によかった」
クラスメイトたちは高橋桃がついに反応したのを見て、みんな安堵のため息をついた。
馬場絵里菜はすぐに彼女の側に駆け寄りしゃがみ込み、心配そうに言った。「桃、大丈夫?」
目を覚ました高橋桃は全身が冷たく、体が震えが止まらず、唇からも血の気が失せていた。
しかしそれでも、彼女は強がって微笑んだ。「大丈夫よ、ちょっと不注意で落ちただけ。心配かけてごめんね」
馬場絵里菜はこの時、自分を責めるばかりだった。さっき彼女と一緒に外に出て空気を吸いに行けばよかったのに。彼女の調子が良くないことを知っていたのに、なぜ一人で外出させてしまったのか。
もし高橋桃に何かあったら、絶対に自分を許せないだろう。