高橋桃の様子を見ると、誰かに付いてきてほしくないようだった。彼女はいつもそうで、自分のせいで他人に迷惑をかけることを好まなかった。馬場絵里菜に対しても同じだった。
馬場絵里菜はその様子を見て、外へ付いていくのをやめた。
観光室を出ると、冷たい風が顔に当たり、高橋桃は急に元気になった気がしたが、体は思わず震え、上着をきつく身に巻き付けた。
この湖の上の温度は湖岸よりも低かったが、太陽の温もりがあるため、少しは暖かさを感じることができた。
船首は風が強かったので、高橋桃はまっすぐ船尾へ向かい、湖面に向かって口を少し開け、大きく風を吸い込んだ。そうすることで少し楽になり、胃の不快感を和らげることができた。
しばらくすると、他のクラスメイトも観光室から出てきて手すりの近くで景色を眺め始めた。中にはカメラを持ってきて、湖面に背を向けて写真を撮る生徒もいた。