第771章:細田登美子、パラダイスに戻る

高橋桃が元気いっぱいで、以前のように皆と談笑できるようになり、落水事件の影響を受けていないように見えたので、馬場絵里菜たちは密かに安心した。

……

夜になり、東京のパラダイスクラブでは、ネオンが交錯し、華やかな雰囲気に包まれていた。

細田登美子はフィット感のある女性用ビジネススーツに黒いハイヒールを履き、波打つ長い髪を自然に垂らし、美しい眉と赤い唇で、颯爽とした姿をしていた。

再び職場に戻った細田登美子は、今回は以前とはまったく違っていた。外見だけを見ても、まるで女王のように堂々と帰還したようだった。

井上には恩があり、井上家全体も彼女に優しかった。細田登美子はすでに決めていた。井上家が彼女を解雇しない限り、彼女は井上家で働き続けるつもりだった。

姿を現すと、すぐにスタッフが伝票を持って急いで近づいてきた。

「細田社長、VIP136号室の豊田社長が割引を希望しています」このスタッフは細田登美子が病気になった後に新しく来た人で、今、化粧も冷たく、オーラが並外れた細田社長を前にして、なぜか少し怯えていた。

「豊田社長?どの豊田社長?」細田登美子は尋ねた。

パラダイスで消費する豊田という姓の社長は百人近くいて、彼女が知っているだけでも十数人はいた。

従業員はすぐに答えた。「海商グループの豊田社長です。お茶を売っている方です…」

そう言われて、細田登美子は理解し、すぐに尋ねた。「消費額はいくら?」

従業員は直接伝票を細田登美子に渡した。「消費額は17万3800円です。」

細田登美子は伝票を受け取り、ざっと目を通してから直接言った。「10%引きにして、聖血桜蘭を1本送ってください。豊田部長に直接サインをもらえばいいです。」

「はい。」その従業員は頷いて、小走りに立ち去った。

一人が去ると、また別の人がやってきた。

「細田社長、VIP225号室のお客様が今夜、大満貫を2つ注文されました。」従業員は細田登美子に伝えた。

パラダイスの慣例では、お客様が大満貫を注文した場合、総支配人が行って乾杯することになっていた。

細田登美子はすぐに言った。「今後、大満貫の乾杯は全て山田社長に頼んでください。私は今、お酒が飲めないんです。わかりましたか?」

従業員は頷いた。「わかりました。では山田社長を探します。」

「あら、登美子?」