第780章:嘘をつくのも下手

豊田剛は冷たい表情で馬場絵里菜に頷き、口を開いた。「この件は本当に奇妙だ」

明らかに、豊田剛も尋常ではない匂いを嗅ぎ取っていた。

「座って話そう」馬場絵里菜は豊田剛を廊下の椅子に案内した。

座ってから、豊田剛はまた口を開いた。「誰かが意図的に東海不動産に問題を引き起こしている。しかも私のセンチュリーグループの人間を利用してだ」

馬場絵里菜は頷いた。「それは私も考えていたことだ。どうやら東海不動産の発展が誰かの邪魔をしているようだね」

豊田剛はため息をついた。「この二日間の新聞は全部見た。相手は権威のある新聞社ばかりを選び、大きな紙面も買っている。こういう手段は表立ってできることではないが、確かに東海不動産にかなりの悪影響を与えることができる」

そう言いながら、豊田剛は少し心配そうに馬場絵里菜を見た。「分かっているだろうが、事故が頻発すれば、プロジェクトは上からストップがかかることになる」

馬場絵里菜は心の中で理解した。「それが相手の最終目的だろうね」

悪影響を作り出し、東海不動産のプロジェクトを停止させ、会社の発展を妨げる。まさに一石二鳥だ。

「この件はやはり調査しなければならない。このまま進展させるわけにはいかない。工事現場には何百何千もの労働者がいる。相手が何人買収したか誰にも分からない」と豊田剛は正直に言った。

「会社はすでに調査のために人を派遣し始めている」

馬場絵里菜はそう言いながら、思わず白川昼の方を見た。「他の二人の怪我をした労働者も見に連れて行ってくれ」

問題を解決するには原因を知る必要がある。手がかりを得るためには、労働者から突破口を見つけなければならない。

入院病棟。

馬場絵里菜たちはまず、高所から落ちて足を骨折した最初の労働者の病室に向かった。

病室では、その労働者の足に石膏がはめられ、宙に吊るされていた。ベッドの横では、少し太めの女性がリンゴの皮を剥いていた。

その労働者は馬場絵里菜と白川昼を知らなかったが、豊田剛は知っていた。

心に後ろめたさがあるのか、豊田剛を見た瞬間、その労働者の目には明らかに動揺が表れ、落ち着かない様子だった。

「豊田社長、どうしてここに?」

患者の名前は細田志といい、センチュリーグループの工事チームの古参社員だった。今、豊田剛を見て、無理に体を起こそうとした。