第790章:他人の労働成果を盗用する

「ナンバープレートは?」

井上グループの井上裕人がオフィスのソファに座り、眉をひそめて尋ねた。「どんなナンバープレート?聞かせてくれ」

向かいに座っているのは山田野太だった。

山田野太は鼻の上の眼鏡を押し上げてから、優しい声で言った。「まず、怪我をした数人の作業員の口座を調査しました。もし闇取引があれば、異常な金額の振込があるはずですが、何も見つかりませんでした。おそらく相手は直接振り込んでいないか、怪我人の名義には振り込んでいないのでしょう」

「それから、センチュリーグループの弁護士を装って被害者と交渉し、何か情報を得ようとしましたが、結局何も得られませんでした。黒幕は非常に巧妙に隠れていて、3人の被害者はあちこちに矛盾があるにもかかわらず、口が堅く、誰かに指示されたことを認めようとしません」

「その後、調査を進めるうちに、東海不動産のマネージャーにたどり着きました」

井上裕人は即座に顔を曇らせた。「どういうことだ?」

山田野太は続けた。「東海不動産の白川社長もこの件を調査していることがわかりました」

井上裕人はそれを聞いて、表情がやや和らいだ。絵里菜の周りの人間が悪さをしていると思ったからだ。

山田野太は少し間を置いてから続けた。「そして、東海不動産の白川社長が自ら車管理所に行き、あるナンバープレートを調査していることがわかりました。私の推測が正しければ、このナンバープレートは今回の事件と大きな関係があるはずです」

井上裕人は眉をひそめ、ハンサムな顔に疑問の表情を浮かべ、口角がわずかに動いた。

「つまり、お前はそんなに苦労して調べたナンバープレートが、結局は東海不動産の人間が自分で調べたものだったのか?」と井上裕人は言った。

これは他人の労働成果の盗用ではないのか?

しかし山田野太は落ち着いた様子で、少しも恥ずかしいとは思っていないようだった。淡々とした口調で答えた。「これは糸をたどって瓜を探すようなものです。その瓜が味方の庭にあったとしても、とにかく瓜は瓜ですから!」

井上裕人は軽くうなずき、それもそうだと思った。少し歪んだ理屈ではあるが。

結局、キュウリも瓜の一種だし、彼はただ絵里菜のことを心配しているだけではないか?

「で、調べたのか?そのナンバープレートの持ち主は誰だ」と井上裕人は真剣な表情で尋ねた。